新田 龍
@nittaryo
Q.また就職氷河期世代が話題のようですが、いったい何が問題なんですか?
A.問題の根源を解決しないまま先送りすることを「将来世代にツケを回す」などと言いますが、まさにその「ツケ」を集中的に回され、絶望的な貧乏クジを引かされた世代だからです。
具体的には、
「就職時に不景気で、既存社員の雇用を守るために採用枠が減らされ」
「不本意ながら非正規雇用を選ばざるを得ず、キャリア形成機会を逃し」
「『非正規は自己責任!』『仕事があるだけ幸せと思え!』『お前の代わりなんていくらでもいる!』とパワハラで使い潰され」
「結果的に給与アップは見込めないのに、高齢化社会を支えるために搾取され続け」
「歴史的な賃金上昇率の中でも自分たちの賃上げは抑制され、その分を若手の賃金アップに回され」
「ようやく退職が見えてきた頃を見計らって、退職金の控除減額&課税強化になりそうで」
「自分たちが高齢者になる頃には年金や医療も充分な恩恵を受けられそうになく」
「当然ながら子供を持つ余裕なんて全然なく、少子化で介護してくれる人もおらず、野垂れ死にするイメージしか持てない、完全に見捨てられた世代」
という状況ですね。
また、その被害が「氷河期世代自体」のみならず、「会社組織」、そして「社会全体」と広範に及んでいることも根深い問題です。どういうことなのか、氷河期世代ど真ん中、1999年大学卒の私が説明しますね。
(1)「氷河期世代自体」の被害
彼らの新卒当時は正社員の求人が乏しく、不本意ながら非正規雇用を選ぶ人も大勢いました。彼らは「頑張って働いていれば、景気が回復した暁には正社員として雇ってもらえる」と期待して不安定な状況に耐え続けましたが、結果的に景気回復期となっても、正社員への転職はなかなか進みませんでした。
なぜなら、雇用が安定している会社の多くは「年功序列制度」をとっており、そういった会社で中途採用の対象となるのは、「会社から折に触れて教育研修を施され、将来の幹部候補としてのキャリアを積んできた正社員」が中心。社会人スタート時点で非正規雇用の人や無職期間が長かった人は、採用対象とは見なされなかったからです。
そういった就業環境や社会構造も非正規化の要因であることが当時はあまり理解されておらず、氷河期世代は世間からは「就職できなかったのは自己責任!」「選り好みしなければ仕事などいくらでもある!」などと批判され、厳しい環境でも本人にとっては「やっとの思いで得た職」でもあるため転職にも踏み切れず、求人を出していた所もブラック企業が多かったりするなど、辛い立場に置かれました。
(2)「会社組織」の被害
氷河期世代の就職時点で正社員の求人が乏しかった理由は、景気後退期と重なり、各企業が既存社員の雇用を守るため、その調整手段として「新卒採用を極端に絞り込んでしまった」からです。結果として、その時点では確かに既存社員の雇用は守られました。しかし年を経るにつれて組織の年齢構成はいびつになり、氷河期から約20年後には「次世代を担うべき中間管理職の層が薄い/空洞化している!」と危機感を抱くハメになってしまいました。
また氷河期世代は劣悪な労働環境下でも低賃金でもよく働いたので、一部の経営者や管理職は当時の非正規労働者の働きぶりがいまだに一定の基準となっており、彼らと引き比べて「最近の非正規の若者は働きが悪い!」「打たれ弱い!」などという不満に繋がっているケースもあります。実際、いまだに「最低賃金スレスレの時給で正社員