ブが舌先で、パの口の中に飴玉を返す。
パの舌と、パの口の中の飴玉と、ブが自分の舌で舐める。
パは抵抗しない。されるがままになっている。
化粧品の味と、パの切れた唇の血の味と、レモン味が混じり合う。
ふたりの舌が飴を溶かしきるまで、ずっとキスしていた。
パ「やっぱさあ、このネタ、セリフ変えよう。ちょっとためしに、一回やらせて」
ブ「…また?」
どちらからともなく唇を離すと、パが立った。ブも立ち上がり、今までの口づけが嘘だったかのように練習を再開する。
ブ「風邪ひきそう」
パ「お前が風邪ひいたらおでも移るからな、気をつけろよ。コンビとはそういうもんだ。飴なんかじゃなくて、生姜汁とか持ってきてやるよ。喉対策の」
パ手製の生姜汁のお陰か、その冬はふたりとも風邪をひかなかった。
…このときのネタを更に何度も練り直して、コント大会でふたりが日本一になるのは、それから何年も先の話。
おわり。