喜劇王6 #268

268名無しさん@Next2ch:2017/04/02(日) 10:35:45.79 ID:???

夜。ブがひとりで自室のベッドで眠っている。
ふと、気配を感じて目を開ける。
暗闇。
闇の中で、枕元にぼんやりと人が立っている。その人が頭を撫でる。
「今日はエイプリルフールだから」
だから、おでがここにこうして来たのも、全部嘘だから、今日は嘘の日だから、起きたら全部、忘れて。
人影がベッドに横たわっているブにそっと近づき、抱き締める。
懐かしい体温と匂い。
ブも抱き締め返す。その人の顔が間近に迫るのを感じる。
「こんなこと、全部、嘘だから。今夜だけだから」
ベッドの中で、相手の身体が熱く、重い。
「嘘の日しか、おでがお前に会うなんて、許されないと思ったから」
「……今日はエイプリルフールだったんだっけ? じゃ、……俺、もうお前と会いたくないし、やりたくない。ずっと、会いたくなくて会いたくなくて仕方なかった。ふざけんなよ。ずっと寂し……くない思いをさせやがって」
「……そっか。ありがとう。……おでもずっと、本当に、お前に会いた……会いたく、なかった」
ベッドの闇の中で互いの唇が柔らかく触れた。
その人の手が、ブの濡れた頬を拭い、頭を優しく撫で、再び強く抱き締めた。ずっと、自分はこうされたかった気がする。抱き締められながら、再び眠りに落ちた。

明るくなって目覚める。自室のベッドにひとり。
半分寝ぼけたまま、枕元の時計表示を見る。四月二日だった。
さっきまで、誰かがいたような気がする。部屋に他人の体温を感じる。懐かしい人と確かに一緒だった。そんな気がした。終


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