【市場の目】インド中銀は引き締め姿勢維持、実は利下げ余地が乏しい可能性も
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・西?M徹氏
インド中銀は引き締め姿勢維持、実は利下げ余地が乏しい可能性も
強気の見通しを維持の一方で食料インフレに懸念、自然利子率上昇で利下げ余地はない可能性も
インド中銀は8日の定例会合で政策金利を6.50%、政策の方向性も金融緩和の解除に注力するとの方針を維持した。昨年後半以降のインフレ率は中銀目標の範囲内で推移するも、足下では食料インフレの動きを反映して底打ちしている。中銀は今年度の成長率見通しを+7.2%、インフレ見通しを+4.5%と従来見通しを維持する一方、インフレを巡って食料インフレによる悪影響を警戒する姿勢をあらためて示し、引き締め姿勢の継続を決定した。なお、6月の前回会合に続いて2名の政策委員が反対票を投じるなど意見は割れている。ただし、成長率見通しは政府見通しを上回るなど強気の見方を維持しており、先行きはインフレが一段と上振れする可能性がくすぶる。さらに、中銀内にはコロナ禍を経て自然利子率が上昇したとの試算があり、金融市場では年内の利下げ観測がくすぶるが、足下のルピー安圧力と相俟って利下げ余地は乏しいとみられる。よって、中銀は相当期間に亘って引き締め姿勢を維持せざるを得ない可能性が考えられる。