【市場の目】中国、7月貿易統計は「駆け込み」の動きを反映している模様
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・西?M徹氏
中国、7月貿易統計は「駆け込み」の動きを反映している模様
先行きは輸出入双方に下押し圧力が掛かりやすい展開となる可能性は高まっている
足下の中国経済は幅広く内需が力強さを欠くなか、景気は外需への依存度を強める展開が続いてきた。しかし、欧米などは関税引き上げによる対中輸入制限の動きを強化しているほか、米国による対ロ制裁によりロシア向け輸出も影響を受ける動きもみられる。世界的な分断の動きを反映して世界貿易は萎縮するなど新興国景気の足かせとなる懸念もあり、中国の外需を取り巻く環境は厳しさを増していると捉えられる。
中国の輸出は前年に下振れした反動で前年比の伸びは堅調に推移し、7月も前年比+7.0%となったが、前月比は2ヶ月連続で減少するなど頭打ちしている。欧米向けは制限強化を前にした駆け込みの動きが押し上げ要因となる一方、世界貿易の萎縮の動きが輸出全体の重石となっている。先行きは新興国のなかにも対中輸入制限に動く流れが広がっており、輸出を取り巻く環境は一段と厳しさを増す可能性が高い。
一方の輸入は内需の弱さが重石となる展開が続いてきたが、7月は前年比+7.2%と2ヶ月ぶりに前年を上回った。前月比も3ヶ月ぶりの拡大に転じており、米国による半導体規制を警戒した関連輸入拡大の動きが輸入を押し上げている。また、素材・部材などの輸入の堅調さもうかがえるが、中国国内で在庫が積み上がる動きがみられるなか、先行きについては輸入も輸出同様に下押し圧力が強まる可能性がある。
足下の人民元相場は米ドル高一服を反映して底入れしており、輸出競争力の低下が懸念される。他方、輸入インフレ圧力の後退は川上段階を中心とするディスインフレ圧力を強めると予想される。中銀にとっては人民元安懸念の後退を受けて一段の金融緩和のハードル低下が期待されるが、金融市場に不透明さがくすぶるなかで人民元相場が変動する可能性もあり、当局の動きに過度な期待を抱くことは難しいであろう。