東京為替見通し=ドル円、米7月雇用統計への警戒感や株価下落で上値が重い展開か
1日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、150.89円まで上昇した後、低調な7月米ISM製造業景況指数や6月米建設支出を受けて、米10年債利回りが一時3.9627%まで低下したことなどで、149.29円付近まで下押しした。ユーロドルは、欧州時間にポンドドルの下落や軟調な欧州株相場の動きを受けて1.0778ドルまで弱含んだ後、米10年債利回りの低下で1.0818ドル付近まで買い戻された。ユーロ円は162.89円から161.10円付近まで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米7月雇用統計への警戒感や3.9%台に低下している米10年債利回り、そして主要な株価指数の下落などから上値が重い展開が予想される。
欧米の株式市場の下落を受けて、ナイト・セッションの日経平均先物は一時大証終値比1530円安の3万6420円まで下落しており、本日の東京株式市場も大幅下落が想定されるため、円買い圧力が高まることになる。
植田日銀総裁は利上げサイクル入りを打ち出したが、パウエルFRB議長は9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始の可能性を示唆し、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BOE)は利下げに踏み切っている。
日本と欧米英の金融政策の方向性の違い、デカップリング(decoupling)が鮮明となりつつあり、円を買い戻す動きが強まりつつある。
先日のFOMCでは、8会合連続での政策金利据え置きが決定されたものの、声明文でのリスクが、これまでの「インフレリスクのみ(highly attentive to inflation risks)」から「2大責務の両面のリスクに留意する(attentive to the risks to both sides of its dual mandate)」に変更された。そして、パウエルFRB議長が9月FOMCでの利下げ開始の可能性を示唆したことで、ドル売り・円買いに拍車がかかっている。
FOMC声明は、2022年3月の利上げ開始以来、2大責務(雇用の最大化maximum employmentと物価の安定stable prices)のうち、「物価の安定」に重点を置き、「高い水準のインフレ(elevated inflation)」の抑制を打ち出してきた。
しかし、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注視しているPCEデフレーターの6月分が前年比+2.5%まで鈍化し、インフレ目標2%に接近してきたため、今回の声明文では、「2大責務の両面のリスクに留意する」との文言に変更された。
すなわち、米国7月の失業率が6月や5月のように4%台に乗せていた場合、9月のFOMCでの利下げ開始の可能性、そして年内3回の利下げの可能性が高まることになるのかもしれない。
米7月の雇用統計の予想は、失業率は4.1%で6月と変わらず、非農業部門雇用者数は前月比+17.5万人で、6月の同比+20.6万人からの増加幅の減少が見込まれている。
さらに、NFPの年次基準改定の暫定値が発表されることで、昨年のように下方修正(▲30.6万人)される可能性には警戒しておきたい。
米7月の雇用統計の先行指標となる7月ADP全米雇用報告は、前月比+12.2万人で6月の同比+15.5万人から減少、7月ISM製造業雇用指数は43.4で6月の49.3から低下しており、7月雇用統計への警戒感を強めている。
10時30分に発表される4-6月期豪卸売物価指数(PPI)では、先日発表されたコアCPIのようなネガティブサプライズに警戒しておきたい。