東京為替見通し=ドル円続落か、タカ派の植田日銀総裁とハト派のパウエルFRB議長
31日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、植田日銀総裁が追加利上げの可能性を示唆し、パウエルFRB議長が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げの可能性を示唆したことで、149.61円まで下落した。ユーロ円も162.02円まで下落した。ユーロドルは、7月ユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値が予想を上回ったことで1.0849ドルまで強含んだ後、1.0802ドルまで反落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、植田日銀総裁が追加利上げを示唆し、パウエルFRB議長が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを示唆したことで、円・キャリートレードの手仕舞いで軟調推移が予想される。
昨日の日銀金融政策決定会合では、政策金利(無担保コール翌日物金利)の誘導目標が、これまでの「0-0.1%程度」から、「0.25%程度」に引き上げられた。
そして、植田日銀総裁は記者会見で、「0.25%への利上げでも実体経済への影響は出ない。経済のショック、景気循環で日本経済に下振れが生じた場合、0.25%では対応しづらい。2006年からの前回の利上げ局面のピークである0.5%が壁になるとは認識していない」と述べた。さらに、中立金利の下限である1%を意識した見通しを示したことで、年内に1回(+0.25%=0.50%)、来年は1-2回程度で0.75%から1.00%に向けた利上げの可能性が示唆された。
日銀では、経済・物価情勢が順調に進めば、来年度にかけて政策金利を1%まで引き上げておくのが望ましいとの声が出ている、と報じられている。
このタカ派的なシナリオを念頭に置けば、世界の資産市場を押し上げてきた「円・キャリートレード」の手仕舞い、すなわち、円が買い戻される局面が想定されることになる。
次回の日銀金融政策決定会合は9月19-20日に予定されているが、20日から月末に向けて自民党総裁選が行われるため、現状の金融政策の維持が見込まれている。
岸田首相は、追加利上げに対して、「デフレ型経済から成長型経済への移行が重要という政府との共通認識に沿って行われたものだ」との見解を示した。
ポスト岸田候補の河野デジタル相や茂木自民党幹事長も、日銀に利上げを要請しており、植田日銀総裁による利上げ路線は、政府・自民党からの支持を得られることで、10月か12月の日銀金融政策決定会合での3回目の利上げの可能性を高めている。
FOMCでは、8会合連続で政策金利据え置きが決定されたものの、声明文が、これまでの「インフレリスクのみ」から「2大責務の両面のリスク」に変更された。そして、パウエルFRB議長が9月FOMCでの利下げの可能性を示唆したことで、ドル売り要因となっている。