【市場の目】内需の弱さがデフレ圧力を招く悪循環に陥る中国経済
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・西?M徹氏
内需の弱さがデフレ圧力を招く悪循環に陥る中国経済
価格競争の激化で企業は価格転嫁もできず、ディスインフレが長引く可能性は高まっている
足下の中国経済は内需が勢いを欠くなかで外需の動向がカギを握る展開が続く。外需依存度が相対的に高い製造業ではマインドが改善する一方、内需依存度が高い分野は力強さを欠く対照的な状況にある。当局は不動産対策に動いたほか、金融市場は3中全会で何らかの対策に動くことを期待しているが、複雑な構造問題を勘案すれば一足飛びに事態打開が進むとは見通しにくい。さらに、足下では欧米などが中国への強硬姿勢を示すなど外需を取り巻く環境も厳しくなっており、景気の不透明感が増す動きもみられる。
内需の弱さに加え、供給過剰はディスインフレ圧力を招いている上、不動産市況の低迷という資産デフレが本格的なデフレを招く懸念もくすぶる。6月のインフレ率は前年比+0.2%、前月比も▲0.2%と下振れしており、生活必需品のみならず6.18商戦による価格競争の動きも幅広くディスインフレ圧力を増幅させている。他方、川上では原材料関連を中心に物価上昇圧力が強まる動きがみられるが、価格転嫁の難しさが川中段階から川下段階でのディスインフレ圧力を招いている。供給過剰に伴う過当競争がEVの値引き競争を招くほか、雇用不安による家計の財布の紐の固さもディスインフレ基調の長期化を招く懸念はくすぶる。
金融市場では3中全会での対策に加え、ディスインフレが金融緩和余地を生むと期待されるが、人民元安を恐れて動けない展開が続く可能性は高い。ミクロでみた中国は企業、技術に世界的な競争力を有する分野があるのは間違いない一方、マクロでみた中国経済を巡る状況は一段と厳しさが増す可能性がある。