東京為替見通し=円安トレンド強い、米金利低下・円金利高止まりも円の買い戻し進まず
昨日の海外市場でのドル円は、欧米株価指数の上昇などを背景に投資家のリスク志向改善を意識したドル買いが先行した。ダウ平均が440ドル超高まで上昇幅を拡大するなか、米10年債利回りがNY勢の参入後に低下幅を縮小したことも支えとなり、一時161.81円と日通し高値をつけた。ユーロドルは総じて1.0820ドル台を中心とする狭いレンジ内推移に終始。
本日の東京市場では円安地合いは変わらないか。昨日はアジア時間でNZ準備銀行(RBNZ)がインフレ目標の前倒しを表明したことでNZドルが対ドルで弱含んだが、米金利が小幅ながら低下したこともあり、欧州通貨や他の主だった通貨でドル安がやや優勢だった。しかしながら、対円でドルは堅調に推移し、改めて円安トレンドの強さを物語っていると言える。また、本邦の長期金利が高水準を維持しているにもかかわらず円高に動かないことで、7月の日銀政策決定会合で仮に国債買い入れの大幅減額を決定したとしても、円が買い戻されない可能性も高まっている。
国債買い入れ額に関しては、昨日まで行われた日銀が「債券市場サーベイ」などに参加する金融機関の実務担当者を集めて行った「債券市場参加者会合」では、メガバンクを中心に国債買い入れの大幅減額を要望したと伝わっている。日銀の買い入れ減少は、本邦金融機関が減少分を引き取るとの見方になっているが、メガバンクにとっては保有国債の含み損を抱える地銀とは違い、含み損よりも金利上昇の収益増加効果が絶大であることで、このような要望の声が強い。ここ最近はインフレ傾向の強い本邦経済指標が出ているが、実質賃金は過去最長のマイナスになり、消費支出も弱く、GDPは大幅に下方修正されるなど、内容は非常に悪いことで日銀の中では大幅減額には及び腰の声が出ている。しかしながら、今回の臨時に行われた債券市場参加者会合での減額要望が強いことを口実に、政府の圧力もあり7月の会合での変更が見込まれそうだ。
また、円安の流れが継続しそうな理由として、岸田政権が円安対策を講じないこともあげられている。今月発表された税収が過去最大になったことや、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も最大の黒字になるなど、政権は円安のメリット部分を享受している。口先では円安を懸念しているが、円安対策は無策なことでスピード調整を図ったとしても、円安を止める手段は限られていると市場関係者も理解している。
本日は本邦からは5月機械受注と前週分の対外対内証券投資が発表される。ここ3週にわたって海外投資家は国債などの国内中長期債を売り越している。前週も海外勢の国債売り越しが大きくなれば、債券市場では7月の日銀政策決定会合での国債買い入れ減額をほぼ織り込んだと言えるか。
また、本日は米国から6月の消費者物価指数(CPI)が公表されるが、市場では前年比では5月の3.3%から3.1%へ低下すると予想。また、コア指数は3.4%で前月から横ばい予想となっている。市場はすでに米連邦準備理事会(FRB)の9月の利下げを7割以上織り込んでいることで、予想通りのCPI低下となった場合のドル売りは限られるか。逆にここ最近の弱いインフレ指数で市場の利下げ予想が高まっていることで、インフレが高止まりした場合のサプライズの方が市場へ与える影響は大きそうだ。仮に予想を上回った場合は、ドル円は3日高値161.95円を超えて円安になることが濃厚だろう。