NY為替見通し=株安で与党要人の修正発言には警戒、米経済指標にも注目
今週に入りドル円は、週初の高値157.61円を頭に5円60銭を超えるドル安・円高が進んでいる。この流れはバイデン現大統領が大統領選挙から撤退したことによるトランプトレードの解消と、与党要人の日銀への利上げ圧力発言などが重なったことが主な要因になっている。
市場は、下落過程でも「絶好の買い場」との論調を繰り返していた識者たちも多くいたことで、ドルロングで捕まっている市場参加者も多くいることが予想され、すぐに円安の流れに戻るのは難しいだろう。ただし、市場流動性が悪化していることもあり、調整のドルの買い戻しが数円程度入っても不思議ではない。
警戒しなくてはならないのは、日経平均が大幅続落になったことで、与党関係者の利上げ発言の修正などが出た場合か。本日を含め日経平均は7営業日続落している。本日は1285円安で引け4月26日以来3万8000円を下回った。トランプトレードの解消という国外からの株安要因もあるが、本邦の利上げ圧力による金利上昇、円高などが株安を導いた一因であるのも明らかで、与党政治家が不用意で無責任な発言を繰り返してきたことの修正発言には気を付けたい。
また、23日に日銀が6月の全国消費者物価指数(CPI)を基に算出して発表した基調的なインフレ率では、刈込平均値は2カ月連続して2%を上回ったものの、加重平均値は1.4%、最頻値は1.6%と決してインフレが高進している状況ではない。また、実質賃金のマイナスが過去最長となっているなど、諸手を挙げて日銀が利上げを推し進めるような状況では決してない。日銀が政治的圧力に屈せず、来週の日銀政策決定会合でも利上げに消極的なスタンスになる可能性も拭いされないことも念頭に置いておく必要がありそうだ。
一方で、ドル円をさらに下押しする可能性があるのは、米国の経済指標の結果が弱くなった場合だ。本日は4-6月期米国内総生産(GDP)や同期の個人消費(PCE)速報値等が発表される。1-3月期GDPは、市場予想を下回ったことで初動はドル売りとなったが、同時に発表されたコアPCEが強かったことでドル買いに転じた。本日もGDPよりもコアPCEへの反応が敏感になると思われる。昨日ダドリー前米NY連銀総裁は「今すぐにでも利下げをするべき」とのコラムを掲載するなど、市場が利下げを促す相場になっていることで、コアPCEが弱い結果になった場合の反応(米金利低下・ドル売り)の方が大きくなりそうだ。
なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の据え置き確率は93%台となり、先週とほぼ変わりはない。しかし、9月は25ベーシスポイント(bps)の利下げは9割弱まで低下した半面、50bpsの利下げは10%超まで上昇している。
・想定レンジ上限
ドル円は、これまでの本日高値153.97円から昨日NY時間の戻り高値154.10円が抵抗帯。
・想定レンジ下限
ドル円は、5月3日安値151.86円。その下は、200日移動平均線151.54円。