【相場の細道】トランプ第2次政権でのプラザ合意2(ドル安政策)懸念
7月13日のトランプ前大統領銃撃事件を受けて、トランプ氏が11月の大統領選に勝利する可能性が高まったことで、減税や関税引き上げという公約が実施された場合、インフレ圧力が高まるとの見通しからトランプトレード(ドル買い・米国債売り)への警戒感が高まりつつあった。しかし、トランプ前米大統領は「トランプノミクスは低金利と関税」と述べている。
1. ドル高は大問題(big currency problem)(7月16日)
7月16日、トランプ氏は、米国がドル高により「大きな問題を抱えている」と述べた。
トランプ氏は、足元の外国為替相場に関し「対ドルでの円安や人民元安がはなはだしい」と指摘して、米国の輸出企業にとって「すさまじい負担だ」との懸念を示した。その上で、米国製自動車の輸入が進まず、対米貿易黒字を抱える日本に対し「不作法だ」と不満を漏らした。
2.ドル高は大惨事(disaster)(4月23日)
4月23日、トランプ氏は、ドルが対円で34年ぶりの高値を付けたことについて、米国の製造業にとって「大惨事だ」と批判した。そして、円安・ドル高の進行により米企業がビジネスを失い、外国での工場建設を余儀なくされると指摘し、こうした為替相場はバイデン大統領が事態を放置している証拠であり、日本や中国などの国々は今や米国をばらばらにする、と批判した。
3. ライトハイザー前通商代表部(USTR)代表
トランプ第2次政権が誕生した場合に、財務長官候補に挙がっているライトハイザー前通商代表部(USTR)代表は、第1次政権の時に、「プラザ合意」のようなドルの切り下げを主張していたドル安論者である。
当時は、ウォール街に近いムニューシン米財務長官(当時:ゴールドマン・サックス出身)やコーン米国家経済会議(NEC)委員長(当時)らの反対によって頓挫した。
もし、もう一人の候補である金融最大手JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)が財務長官に指名されたならば、ウォール街出身の財務長官の常(※リーガン財務長官、ルービン財務長官、ポールソン財務長官)として、ドル安政策ではなくドル高政策が採用されると思われる。
バンス米副大統領候補は、ウォール街よりも、「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」に軸足を置く、ドル安論者である。
4.外国為替報告書
米財務省は6月20日に発表した半期に一度の「外国為替報告書」で、2023年7月~12月の期間中に、7カ国・地域(日本、中国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、スイス、ベトナム)が為替の慣行に関する「監視リスト(Monitoring List)」の対象になっていると表明した。昨年秋の報告書では、日本は外されていたが、今回は、2023年の日本の対米貿易黒字が624億ドルと高水準だったことと、経常黒字の国内総生産(GDP)比率が3.5%だったことを理由に追加された。