5.0さまざまな「女らしさ」の様相
2016年8月5日 形式: 文庫
この文庫本の帯で、かの筒井康隆が本作を激賞したとありましたが、さもありなん、と思いました。展開がテンポ良く意外性もあり、登場人物のキャラクターも立っていて(書道家の孫娘2人なんてまさに筒井康隆好み)、ユーモアもあり、ペダンティズムも一種のスパイスとして効いている。
特別込み入った心理描写とか、深遠なテーマがあるわけではないのですが、卓越した知性を持った一流の筆による娯楽小説として純粋に楽しめます。
さまざまな「女らしさ」の様相を持った個性的な登場人物が現れますが、女性だけでなく応対する男性の「男らしさ」の描き方も見ものです。主人公の弓子は考え方の分析的、論理的なところなど、むしろ「男性的」な側面もふんだんに持っているように思えるのですが、読み終えるとやっぱり魅力的な「女性」としか言いようがない。素晴らしい人物造形だと思います。
小説そのものは、自由闊達で居ながらも分析的で客観的なところがあり、極めて「男らしい」小説だな、という印象でした。