>>72←妄想
現実↓
エリカがショッピングモールにつくと、時計は12時半を指していた。
西口を入ってすぐ左のカフェテラスに、見知った顔を見つけたエリカは、少し口角を上げた。
「あらですりん。貴女がエリカより早いなんてね」
「久しぶりだね、エリカ」
最近連絡がなく心配していたが、相変わらずゆるい笑みを浮かべながら彼女はそう返してきた。
手元には飲みかけのカプチーノが置いてある。
「ああ、エリカもなにか飲もうかしら」
負けじと、近くに居た店員を呼びつける。
「マリアージュフレールのマルコポーロを頂けるかしら?おいてない?エリカが頼んでいるのに?」
しばらくすると、一杯の熱々の紅茶が今にも死にそうな顔をした店長によって運ばれてきた。
「カプチーノなんて、ですりんは相変わらず不粋な物を召し上がるわね」
そう言って一口。む。お湯の温度が高すぎる。潰そうかしらこのお店。
「うふふ。はい、砂糖」
見当違いに砂糖を入れてくれる友人に、少し眉を顰める。
「......それで?何よ、話したい事って。エリカも暇じゃ無いんだから、端的に話してよね」
これから、招かれている晩餐会の為にパリに飛ぶ予定があるのだ。
「うん。実は......」
「なによ」
語気鋭く先を促すエリカ。
「実はね......エリカに、......エリカに会わせたい人が居るの!」
満面の笑みを浮かべるですりん。
「はぁ?」
生唾を戻したくなるエリカ。
「うふふ。ごめんねエリカ......黙ってて......でもその人凄く素敵な人なの。今朝もね......」
溢れだす自慢話を、ちょっとまったと話を遮る。
「深刻な感じで呼び出しておいて、貴女がエリカにしたかったのは、そんなくだらない話なの?」
「え?なにかいけなかった?」
「あのねえ、このエリカ様に面会のアポイントメントを取るのに、
どれだけの時間とコネクションが必要だと……あら、失礼」
無意識で手が動き、紅茶のカップを倒してしまうエリカ。
「ッ!」
驚いたのか、ですりんがビクリと身体を震わす。