( 二人の殺し屋と少女の物語。 )? #7

7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします@2周年:2015/05/10(日) 18:28:55.62 ID:PSLxgAk/

003

 少女は何も持たず逃げてきたのか、初夏とはいえ肌寒い深夜に寝間着姿で裸足だった。
 ドアの脇にいる燈浬を見て、固まる。

「……」
「……」

 燈浬も少女を見下ろす。
 お互いの視線が交わり、気まずい空気が流れる。

「……」
「めんどくせぇことになったな」

 燈浬は呆れたように呟くと、少女の細い腕を掴んだ。燈浬が腕を掴んだ瞬間、少女は暴れだす。

「いやっ!! やめてよっ!! この馬鹿!! あんた達なんか最悪!!」

 暴れたが、大人の力にかなう筈が無い。燈浬は難なく少女を押さえつけることができた。
 そして、少女の耳元で囁く。

「うるせぇよ。今の自分の状況考えろ。騒いでどうにかなんのか?」

 少女は口を噤む。
 腕から伝わる体の震え。寒さからではないだろう。

 さて、どうしようかと燈浬が考えるとふと視線を感じた。燈浬が下を向くと、少女の怯えた視線と合った。

「……なんだよ」
「私を……どうするつもり?」
「さぁ」

 それは、絢にでも聞いて見なきゃ分からない。

「覚えておきなさい! 私は絶対にあんた達を許さないんだからッ! お母さんを殺した――……」

 燈浬は咄嗟に少女の細い首を掴んでいた。

「んぐ……ッ」
「うるせぇっつったろ。そんなにキャンキャン騒ぎたいならあの世でするか?」
「ひっ」

 少女が悲鳴を飲み込んだと同時に、ドアが先ほどと変わらない乱暴さで開けられた。
 燈浬が視線だけ向けると、侑稀。燈浬と彼に首を押さえ込まれている少女を見て、慌てて言った。

「あ……。燈浬!! その子、殺しちゃ駄目やで?」
「分かっている。いちいち言うな、侑稀」

 燈浬はそう言うと少女の首元から手を離した。

「ごほっ、ごほっ……」

 少女は壁際にしゃがみこみ咳き込んでいる。

 燈浬はそんな少女を冷たく見下ろした。
 侑稀はと言うと少女の近くに行き、優しく話しかけている。少女は何も話そうとはしないが。

「侑稀、そのガキどうすんの?」
「さぁ? 俺は、このガキを殺れとは言われてへんからなぁ。絢に聞くっきゃないやろ」

 ふーん、と返事を返して、燈浬は空を見上げた。

 先程の無数にあった星たちは何処に行ったのか。
 空はどんよりと曇っていた。

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