( 二人の殺し屋と少女の物語。 )? #4

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします@2周年:2015/05/10(日) 18:27:06.97 ID:PSLxgAk/

001

 スゥーっと軌跡を描きながら流れ星が消えた。
 それを廃墟の屋上で壊れかけたフェンスに背を預け、煙草を吸いながら夜空を仰いでいた一人の青年が偶然、見た。

「そういや……あいつが言ってたな。流れ星が消えるまでに三つお願いを祈ると、叶うって」

 それからしばらくの沈黙の後、彼は搾り出すように呟いた。

「何度祈ったって、お前が戻ってくることなんてねぇのにな――――」

 自嘲気味に歪められた青年の表情は、即座に変わった。

 まるで、猛禽類が獲物を獲るかのような、切れ長の鋭い紅の瞳を細くして微かに足音が聞こえたドアを睨み付けた。
 彼が見ている中、ドアが、ぎぃーと音を立てて開き――――。

「ん? 燈浬(トウリ)、何、睨み付けてるんや?」

 ドアから姿を現したのは、黒に近い茶髪にアーモンド形の琥珀の瞳が猫を連想させる青年。
 燈浬、と呼ばれた青年は嘆息して言った。

「……なんだ、侑稀(ユウキ)かよ。何でもない」
「なんやそれ。と言うか、ここには俺かお前、絢(ジュン)しかこないやろ」
「絢は、あまりこねぇだろ?」
「あーそうやね。あの人、自分の事、か弱い女の子やと思ってるし? だから、夜は出歩きたくないんやって」

 侑稀、と呼ばれた青年は無邪気に笑って言う。
 そんな侑稀の言葉を聴いて燈浬は、呆れたように溜息をついて呟く。

「……あの人、薬でもやって鏡の中の自分に幻覚、見てるんじゃねぇよな」

 と。
 しかし、燈浬はすぐに話を変えて侑稀に訊ねた。

「で、今日は誰、殺んの?」
「ん? あー、今日は燈浬はやりたくない仕事だと思うで?」
「なんで?」

 燈浬が、即座に問い返すと、侑稀は溜息をついて言う。

「ええ加減、すぐに聞きなおす癖、直しぃ? ……自分でも分かっとるやろうが。女だからや」

 侑稀がそう言うと、燈浬は目を伏せ舌打ちをした。
 そんな燈浬に侑稀はお構いなしに言う。

「だから、今日は俺の番な?」
「勝手に行けよ」
「あー駄目駄目。絢が言ってたんよ? 今日から、二人で行動しろって」
「なんで?」

 彼女が言いそうにない事を言われ、怪訝な表情をする燈浬。侑稀はニヤッと笑う。

「誰かさんが暴れまくって警察沙汰になりそうになったからやないのー?」
「う……」

 燈浬が、煙の吸いすぎで咽た。

「誰かさんのせいやね」
「……いけばいいんだろ、行けば」
「よし、行こっ」

 侑稀が、悪戯っ子のように笑った。

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