「存在の肯定感」が失われているとき、人は自己愛でそれを穴埋めする傾向
に向かいます。ですが、幼児的な自己愛が自己肯定感へと移行できなかった
背景には親の接し方や教育が深くかかわっています。(※ 先天性の機能不全
が在る場合は除きます)
自己肯定感は自己愛と異なります。自己肯定感のある人は、自身の正も負も
含めて全体として受け入れ、そのままで在れるのです。
自己愛は自他の比較意識で虚勢を張り肯定的な要素だけを前面に出し、否定
的な部分は隠したがります。これが言い訳や嘘にもつながるわけですが、そ
れが通用しない時には自己否定状態になるわけです。
元々現代の競争社会は、「自己商品化」的な自己アピールをしつつ、生き残
るための勝ち負け合戦を過剰に意識させる社会です。
そうなるとどうしても自己愛的な自我運動が刺激されやすく、自我の未熟な
人ほどさらに自己愛を強化して自我を防衛する傾向になるわけです。
社会自体が存在の自己肯定感を高める作用よりも、むしろそれを奪う作用の
方が強いため、特に「自己愛的な状態のまま成人した人」は、ますます自己
愛でその不足を穴埋めする傾向に向かいやすくなります。