それは私です by: 柴田元幸 出版社: 新書館 2008/04
最初の「自動翻訳のあけぼの」でいきなり引き込まれた.
これは「新・訳太郎」という自動翻訳ソフトが,
>>> 訳文のスタイルを選ぶ機能は「ですます調」「である調」「口語体」「文語体」程度にはあったわけだが、それが今度は、「村上春樹訳」「池内紀訳」「吉田健一訳」「二葉亭四迷訳」などを選べるようになったのである。
ここにはきわめて複雑な過程が含まれている。つまり、ただ単に、村上春樹なり池内紀なりの言葉づかいの癖・傾向のようなものを記憶させて、それを訳文に盛り込むというにとどまる話ではない。少なくとも「新・訳太郎」を製作したiトップ社が豪語するところでは、この原文を読んだら吉田健一なり二葉亭なりはこのように反応しただろうというところまで考えて−つまり、まずニュートラルな訳文を作ってそれに訳者色を付加するのではなく、訳文が生成する現場にまでいわば踏み込んで−訳を生成するところにこのソフトの新しさがあった。