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――― 朝日新聞 ≫ 2004年6月24日
≫ 16面 オピニオン欄 ≫ 「声」より全文
◆ やけどの私に残る父の言葉
主婦 Aさん
(某県某市 70歳)
[引用者註:記事は匿名ではなく、ご本名もお住まいの土地も記されています。念のため伏せました。なお、ふりがなは私が付しました。]
生まれて8カ月目に隣家の囲炉裏(いろり)に落ちて、顔全体にやけどの痕(あと)がケロイドになって残りました。
これまで、一度会ったら忘れられないという顔のやけどの痕を、ある意味で人に覚えてもらえる長所として、そのためには悪いことも出来ずに生きてこられたのは、9歳の時、病気で死んだ父の言葉でした。
[引用者註:>9歳の時=Aさんは1934年前後のお生まれですから、1943年頃になります。]
「悲しい事があったら、腹いっぱいのご飯を食べて寝なさい。そうすれば朝起きるとどんなつらい事も忘れて元気になれる」
思い悩み、悲しい時は、今でもこの言葉を実行すると、不思議に生きていこうという力がわいてきて、どんな壁があっても突き進める気がするのです。
一面にケロイドの残る顔を一生持っていかなければならない私に、父が持てる愛情の全部を込めて私に残した[原文ママ]一言だったのでしょうか。
小学校に入学していじめに遭って泣きじゃくる私の行く末を案じながら、両手で抱きしめて、噛んで含めるように言う父のぬくもりが、今までの私を支えてくれたのだと思います。
父の面影は年と共に薄れていきますが、与えられた試練を乗り越えて自分を大切に生きていかねばとの思いは、心に刻み込んでいます。