テンプレNEW!!!
■1/28発売 週刊文春2016/2/4号
夜更けのなわどび 林 真理子
SMAPのおわび会見で、今、日本中が揺れている。
最初ワイドショーなどは、「これで一件落着」
としようとしたのであるが、これには抗議が殺到した。視聴者はみんな見ていた。すごいディテールまで。
「リーダーの中居クンの位置が端っこになって、キムタクが真中、主導権を握っていた」
「キムタクがドヤ顔だった」
などというのは序の口で、
「中居クンが、左手でずっと右手の甲をつねり押さえていた。あれは感情を押し殺そうとしていたから」
「草彅クンの伏し目が、一度も上がらなかった」
などと実に細かいところを見ているのである。ネットでは「公開処刑」「人権侵害」の文字が躍り、皆が怒り狂った。
私もメンバーのつらそうな顔を見ていたら、悲しみと憤りとで涙が出てきそうになった。
彼らをこんなに悲しく、つらい顔に何がさせたんだ!中居クンなんか、屈辱にじっと耐えていた。
今までチャラいとずっと思っていたけれど、彼は男気がある。立派だ。
しかし、いわゆる「ケツをまくる」というわけにはいくまい。
私も今回のことで初めて知ったのであるが、「芸能人」というのは契約というのがあるのである。
何年何月まで、そこの事務所に所属し、芸能活動をするという約束だ。それを破ったりすると、
SMAPのようなスターだと、何十億という違約金を払わなくてはならないらしい。
まあ、SMAPの四人(※それぞれの漢字の上に強調の点)がぐっと我慢をしていたのは、
お金のためだけではないだろう。多くの人たちに迷惑をかけるわけにはいかない。
何よりも自分たちは歌を歌い続け、演技をしたいという思いがあるからだ。
こんなに後味の悪い芸能ニュースがあるだろうか。これからバラエティや歌番組でメンバーの顔を見るたび、
あの暗いうつむいた表情をきっと思い出すはずだ。ぬぐってもぬぐえない。いったいどうしたらいいんだろう。
~略~
シンプルに判断を下せない。これは幸せなことなのか、違うのか。
SMAPの記者会見、見たことだけを深く心に刻もう。