「自衛隊は要らない」という「9条信者」が忌み嫌う『カエルの楽園』
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/05131515/?all=1
「自衛隊を違憲と考えるのか」という問いに対し、志位和夫委員長は従来からの自説、すなわち、
同党が以前より唱えている「段階的解消」論を述べた。
これは、ごく簡単にいえば、自衛隊を「当面は維持」するが、そもそも自衛隊は「憲法9条違反」の
存在なのだから、軍縮を進めて、段階的に解消する、という方針のことである。
「それで国の安全は守れるの?」という素朴な疑問に対しては、すべてのことを話し合いで解決できる
ような状況を外交的努力によって実現すれば、自衛隊は不要であるし、政治の力でそういう状況を
作ることはできる、というのが志位氏らの主張だ。
このスタンスはかなり極端だとしても、「憲法9条のおかげで日本は平和だったが、集団的自衛権の
行使容認によってリスクが高まった」という主張をする政党、識者は多い。一方で、こうした立場に
対して「9条信者」と揶揄する人も少なくはない。
こうした議論に関して、「あの小説にそっくり」という声が一部で上がっている。百田尚樹氏の新作『カエルの楽園』だ。
同書の主な舞台は「ナパージュ」というカエルたちの国。そこには「三戒」という教えが存在していて、
国民(カエル)たちは皆、それを信じている。「三戒」とは、「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」というもの。
ナパージュのカエルの多くは、「自分たちが平和に暮らせているのは、『三戒』のおかげだ」と信じている。
しかし、外の世界から来たカエルには、到底信じられない話なので、あれこれ聞いてみるのだが、
ナパージュのカエルたちの「信念」は揺るがない。その問答の一部を、同書から引用してみよう。
「もし(他の国から)襲われたら、どうするの?」
「襲われたって争いにはなりません」
「どうして?」
「ぼくらが争わなければ、争いにはならないからです」
「たしかに争わなければ争いにはならないだろうけど、襲われたら、どうやって身を守るんだい?」
「襲われないんですから、そんな話をしてもしかたがないでしょう。この国は三戒が誕生してから、
一度だって他のカエルに襲われていないんですから」
「それって、たまたまじゃないのか」
「あなたはたまたまで平和が長く続くと思いますか? いいですか、この平和はぼくらの三戒の教えの
おかげなんです。それ以外にはないんです」
徹底して、ある種の「カエル」たちを戯画化した同作は、これまでの百田作品以上に賛否両論を巻き起こしている。
福岡県在住の共産党の町議会議員は「立ち読み」をしたうえで、「ひどいの一言」という感想を
ツイッターで述べたほどである(それに対し、そもそも丸ごと「立ち読み」というのはいかがなものか、という批判も出た)。
ナパージュが迎える衝撃の結末が、癇に障ったのだろうか。
一方で「これからの日本を考えさせるために、子どもに読ませておきたい」といった感想も多く寄せられており、
同作は寓話ながらも、これから憲法を考える上で、一つの入り口となっていくのかもしれない。