## 短編小説『春を告げる声 済州島にて』
エメラルドグリーンの海と、どこまでも広がる柑橘畑の香りが、ソヨン、ジウ、ソヒョンの頬を優しく撫でた。
祖父母の故郷、済州島。
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温暖で風光明媚なこの地で、三人は言葉少なに風景を眺めていた。
77年前、この穏やかな島で、想像を絶するような惨劇が繰り広げられ、自分たちの祖父母が命からがら海を渡り、異国で生き延びたという事実が、まるで遠い日の悪夢のように、彼女たちの胸に重くのしかかっていた。
宿に戻り、何気なくスマホを開いたソヨンは、眉をひそめた。
K-POPガールズグループの日本人メンバーが、「韓国は三・一節が祝日で羨ましい」と発言したことが、韓国中で大きなバッシングを呼んでいた。
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1910年から日本の植民地となった朝鮮半島。
1919年に勃発した三・一運動は、第一次世界大戦後のパリ講和会議でアメリカのウィルソン大統領が提唱した民族自決主義に触発され、朝鮮半島全域で燃え上がった最初の大規模な独立運動だった。
「『独立』か…」ジウが呟いた。
その言葉は、三人の間に複雑な感情を呼び起こした。
日本統治時代の済州島で、彼女たちの祖父母たちは、確かに贅沢とは無縁だったかもしれないが、少なくとも平和で穏やかな日々を送っていたという。
学校に通い、畑を耕し、隣人たちと助け合いながら、ささやかな幸せを育んでいた。