なぜ生物は眠るのか?「脳がなくても眠る」という驚愕の研究が覆す「人間の常識」
私たちはなぜ眠り、起きるのか?
長い間、生物は「脳を休めるために眠る」と考えられてきたが、本当なのだろうか。
「脳をもたない生物ヒドラも眠る」という新発見で世界を驚かせた気鋭の研究者がはなつ極上のサイエンスミステリー『睡眠の起源』では、自身の経験と睡眠の生物学史を交えながら「睡眠と意識の謎」に迫っている。
(*本記事は金谷啓之『睡眠の起源』から抜粋・再編集したものです)
生物はなぜ眠るのか?
そもそも、なぜ私たちは毎日眠るのか?
睡眠という状態は、何のためにあるのか? じつは、私たちは古くから、ずっと考えを巡らせてきた。眠りの意味を宗教や迷信に求め、その解釈は芸術に投影された。今、その答えを科学で明らかにすることはできないだろうか?
私は19歳だった大学2年生のとき、ヒドラという不思議な生き物を観察していた。水の中で生活するクラゲやイソギンチャクの仲間で、0.5~1センチメートルほどの小さな生き物だ。ヒドラには、脳がない。脳をもたず、たった二つの細胞の層からできた体。水の中でゆらゆらと揺れ動く姿は、思考や感情を伴わず、流れに身を任せて生きているようだった。でも、そんなヒドラにも、自ら体を動かして餌を採り、ときに動きを止めて休む状態がある。それは、まるで眠っているかのようだった。
それから私は、その眠っているかのような状態について研究した。まず、睡眠とはどういう現象かを徹底的に考えてみた。そして、睡眠の基本的な要素が、脳をもたないヒドラにも存在することを実証していき、その睡眠をコントロールする遺伝子が、ヒドラと他の動物で共通していることを発見した。成果は、研究をはじめてから三年半ほど経った2020年に、論文として発表される。「脳がなくても眠る」という事実は、睡眠科学の常識を覆し、「ヒドラにも、他の動物と共通する睡眠メカニズムが存在する」という発見は、世界中で大きな反響を呼んだ。
私たち人類には、古来より興味をもちながら、でもずっと答えを後回しにしてきた問いがある。私たちの「意識」とは何か、ということだ。私たちには、自我と主観性があり、思考して意思をもつ。意識があるからこそ、意識が宿っていることに気がつく。ただ、私たちの体から、どのようにして意識が生じるのか、未だよく分かっていない。
金谷 啓之
全文はソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/c54de104e9d9c1bc8c52b03d554257c39a386fba
2024/12/22(日) 6:49配信 現代ビジネス