コロナ薬ゾコーバ、価格引き下げへ 「費用対効果が悪い」
塩野義製薬の新型コロナウイルス治療薬ゾコーバの薬価が引き下げられる。「費用対効果が極めて悪い」という評価結果がまとまったため。ゾコーバは錠剤の抗ウイルス薬で、重症化リスクのない患者を対象とする国内初の治療薬として承認された。現在は5日間の服用で約5万円で、数%引き下げられるとみられる。
9日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で「標準治療に対する追加的有用性がない」という費用対効果の検証結果が了承された。
ゾコーバはコロナ感染で重症化するリスクがない軽症から中等症の患者に対する飲み薬。発症から72時間以内に服用すると、発熱やせきなどの症状を偽薬(プラセボ)に対して1日早く改善させる効果があるとされる。
中医協の専門組織は解熱やせき止めなど対症療法となる標準治療の効果と費用を比較したところ、ゾコーバは効果に対して約5万円の費用は高く、投与することで全体の医療費を押し上げるという検証結果をまとめた。専門組織は「有効性はゼロとは言い切れないが、費用対効果は極めて悪い」としている。
ゾコーバは国産のコロナ治療薬として輸入薬よりも安定した供給が期待され、厚労省は2022年11月に初めて緊急承認した。期限付きの実用化だったが、再申請を受けて24年3月に厚労省が通常承認に切り替えることを認めた。
政府はコロナ対策として200万人分(薬価換算で1000億円分)のゾコーバを購入し、患者が服用した際は費用を全額公費負担していた。併用できない薬も多く、厚労省によると、このうち9割弱の約177万人分は未使用となっていた。同省は3年の使用期限を迎えれば廃棄する予定。
専門家からは「多くは自然に回復する軽症の患者に全額公費負担で投与すれば医療財政に与える影響が大きい」という指摘が出ていた。新型コロナが23年5月に感染症法上の「5類」に移行した後、同年10月からは全額公費負担をやめて患者に自己負担が生じている。
コロナ治療薬では3月にMSDのラゲブリオの費用対効果について同様の検証結果が出て、薬価は7月から約9%引き下げられた。ゾコーバの引き下げ幅も同程度とみられ、安価な既存薬との差は大きい。ゾコーバを承認したのは日本だけで、塩野義製薬は米国、韓国などで承認の申請を進めている。
9日の中医協では委員の一人が「コロナ治療薬全般について、追加的有用性が認められていない印象がある」と指摘。「コロナの感染が拡大した当初は重症化する患者も多く、新しい治療薬として一定の評価をした。だがウイルスの変異で重症化する人が減っており、限りある医療保険財政の中で適切な治療の選択を考える必要がある」と求めた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA091AT0Z01C24A0000000/
2024年10月9日 14:00 日本経済新聞