おり、事件の9カ月前の87年1月に発生した朝日の東京本社への銃撃に続いての犯行であることを示唆していたという。
幕末期に実在した勤皇を掲げる志士集団「赤報隊」を名乗る犯行声明と脅迫文は、朝日の阪神支局襲撃を含めて8件。一連の事件は、警察庁の「広域指定116号事件」に指定され、全国的な捜査が行なわれた。
警察庁は98年に「重点捜査の対象者」として9人をリストアップした。しかし、いずれも事件との関係は確認されず、2003年に全事件が公訴時効を迎え、事件は闇に葬られた。
この未解決事件を巡っては、2009年に週刊新潮が「実行犯」を名乗る男の手記を掲載し、その後、手記の内容が虚報と判明する派生事件も起きた。そんないわくつきの事件について宮本議員は、旧統一教会問題を追及するジャーナリスト、鈴木エイト氏の著書も引きながら興味深い指摘を行なった。
「宮本氏が示したのは、阪神支局襲撃事件での捜査で兵庫県警捜査1課が作成したとされる資料です。鈴木氏が入手し、著書でも言及したものと同じ資料とみられ、そこに書いている内容をもとに旧統一教会と、同教団の関連団体である『国際勝共連合』について『捜査や調査は行ったことは認められるか』とただしたのです」(同)
赤報隊事件の発生当時、リベラルな論調で知られる朝日を主要な攻撃対象としている点などから、思想的な背景を持つ組織的な犯行も疑われた。とりわけ、朝日や系列の雑誌が統一教会による霊感商法を厳しく批判していたことから、事件への関与の可能性を考慮したとしても不思議ではない。
ちなみに、朝日新聞阪神支局銃撃事件の直後には、「とういつきょうかいの わるくちをいうやつは みなごろしだ」という脅迫状が、使用済みの薬きょう2個が同封された状態で朝日新聞東京本社に届けられている。同封の薬きょうは事件で使われたものと同じ米国レミントン製で口径と散弾のサイズも同一だったという。もちろん、犯人が騙っている可能性も否定できないが......。
■国会で追及された再捜査の必要性
宮本氏は、資料中のある記述についても言及した。
「宮本氏が取り上げたのは、『政界工作』と題された部分についての記述です。そこには、『日韓親善協会の中に勝共連合のメンバーを送り込み、自民、民社、商工会議所のメンバーを引き込んでいる』と書かれているとし、『自民党本部の職員20人前後の勝共連合のメンバーがいる』とも明かしました。
鈴木エイト氏の著書でも資料のこの記述部分を取り上げていますが、自民党との教団の蜜月を裏付ける参考資料として取り上げたのみで、赤報隊事件との関連についてはさらに突っ込んではいなかった。宮本氏の質問は資料の記述をもとに警察幹部と公安委員長に回答を求めており、より踏み込んだ質問だったといえるでしょう」(前出の政治部記者)