市場では為替介入の有無に加え、その効果にも関心が集まる。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「初動として155円超えまで持って行った。時間を稼ぐという短期的な効果はあったといえる」と指摘する。
今後の焦点は効果の持続性だ。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは「再び介入があるかもしれないという警戒感は拭えず、円売り・ドル買いを抑制する効果はある」と指摘する。「為替介入」があった1ドル=160円を政府・日銀の「新介入ライン」として警戒する声もある。
ただこうした効果はあくまで「円安・ドル高トレンド」の転換を待つ時間稼ぎにすぎない。30日の東京市場でも早朝の1ドル=156円台前半から10時50分ごろには157円台まで下落したように、国内勢のドル調達意欲は依然として根強い。
りそな銀行の田中春菜アドバイザーは「160円を付けたことで(一定の水準を超えるとオプション市場でドルを調達する権利が消失する)ノックアウトが発生し、ドル需要は足元で増加している」と指摘する。
米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退するなか、5月1日には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表やパウエル議長の記者会見も控える。日米金利差など円安をもたらしてきたファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が変わらない限り、介入をしても円安基調は不変――。円安に振れた30日の東京市場はそんな市場参加者の心理を映しているかもしれない。
(佐伯遼)
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