AERA 8月16日(月) 12時44分配信 / 国内 - 社会
──事件から2年が経過した。
遂に加藤智大被告の口から動機が語られた。
「派遣」「非モテ」というキーワードに、
少なからず共感した若者も多かった。
しかし、それぞれの若者が描いた「加藤」は、
被告自身の言葉で、打ち砕かれていった。──
「普通の人じゃん」
だが、そんな彼らの「共感」も、裁判とともに「失望」に変わり始めた。
〈加藤さんは偉大な革命家〉
そんな書き込みが並ぶ掲示板は、ネットで知り合った女性と遊んだり、
月1回のペースで風俗通いしたりしていたことが明らかになると、
こんな書き込みが散見されるようになった。
〈もう誰も革命家とは呼ばないな/結構遊んでるじゃないか〉
加藤被告の裁判に10回足を運んだ千葉県の無職の女性(28)も、
加藤被告に裏切られたと感じる一人だ。裁判があることは
インターネットの巨大掲示板サイト「2ちゃんねる」上の
「加藤智大を今すぐ抱きしめてやりたい」というスレッドで知り、
本人を直接見てみたいと思った。
〈どうしてみんなが俺を無視するのか真剣に考えてみる/不細工だから/終了〉
〈彼女がいない、ただこの一点で人生崩壊〉
そんな加藤被告の書き込みに感じるものがあったからだ。
初めて見たとき、こう思った。
普通の人じゃん」
犯行直前まで同じ職場で働いていた玉城勇人さん(31)は、
職場を案内したことを覚えている。食堂に案内した際、
立て続けに加藤被告から質問を受けた。
「社員にはなれますか?」
「どのくらいで仕事は覚えられますか?」
強い意欲を感じた。
ドライブにも誘われ、一緒に遊びにいくなど、
私生活も楽しんでいるように見えた。そこへ、突然の「クビ通告」──。
「使い回しのコマなのか?」
そう加藤被告が待機所で愚痴っていたのを覚えている。
事件後、メディアが殺到した。派遣会社のフルキャストや
派遣先の関東自動車工業から、取材に応じないよう言われたが、
むしろ積極的に応じた。
「僕自身、8年間働いたのに期間社員にすらなれず、最後は封書1枚で
契約解除を伝えられた。残業は派遣社員に回されるなど、派
遣の待遇を知ってもらういい機会だと思っていた」
玉城さんは今、実家に帰り、介護ヘルパーの仕事に就いている。
給料は手取り12万円。一人暮らしさえ、できない。
だからこそ、改めて加藤被告が若者の置かれた雇用環境などを
話すことに期待した。
だが……。
かつて革命家と持ち上げられた加藤被告はいま、ネット内で、
〈加藤はリア充(充実した暮らしをしていたこと。『リアルに充実』の略)だったじゃん〉
などと書かれている。仲間と思っていた加藤被告に
裏切られたと思う同世代の腹いせだろう。
とはいえ、冒頭の女性は「加藤君」と完全に
おさらばできず、手紙を送り続けている。
「彼を否定することは、私を否定することになる。
加藤君は私を形成する一部なんです」
https://archive.md/00jol