憲法も「訂正」すべきだ 批評家・東浩紀さん新刊ロングインタビュー
https://www.sankei.com/article/20231203-6ILODAYFOJPMZF4SZA5QXA5ITQ/
現代の政治的分断を超え、民主主義の危機を克服し得るのは「訂正可能性」の概念ではないか-。批評家の東浩紀さん(52)の思想書『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)が話題を呼んでいる。「正しさ」が求められ、誤りが厳しく断罪される時代に、なぜ訂正が重要なのか。「絶対的真理をぶれずに守るのが良いという考えから離れ、人はみな常に訂正し続けていることを自覚するべきだ」と語る東さんに聞いた。
人間は変わらない
――執筆時期は一昨年から今年の春にかけてとのことですが、新型コロナウイルス禍からウクライナ戦争という時代背景との関係は
「コロナ禍の中、デジタル技術を使えば感染症を押さえ込むことができるというタイプの話が、特に初期の頃に盛んでした。それは結局挫折するものの、人間の自己の能力に対する自信過剰については、このコロナ禍で強く思いました。今回の本では、その自信過剰と、いわゆる人工知能民主主義という思想を重ねながら書いています。民主主義や政治について絶対的な真実のようなものがあると考えて、デジタル技術で民意を正確に把握すれば正しい政治になるというタイプの議論はむしろ危険なんだよ、それは人間の能力に対する過信から来てるんだよということを言いたかった。そのあたりでは、コロナ禍と結構関係している本です」
――コロナ前は、例えばイスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリによる、人類はもはや戦争、感染症、飢餓を克服しつつある、という本もベストセラーになっていました
「ハラリの本を読んだときはすごく違和感がありました。飢餓を克服と言うけど、現在でも国連の統計では7億人以上が飢餓人口です。一体どうして克服していると言えるのか。ただ、彼の本がベストセラーになり、今も影響力を持っているというのは、やはり人がそういう思想家を求めているんだなと。21世紀になってから2010年代にかけて、新しい情報技術を使えば世の中が良くなる、意識をアップデートして次の時代に行くんだというタイプの議論がずっと強かった。でも結局、20年代に入って起きている現実といえば、人類は感染症も克服していないし、戦争まで始まってしまった。しかもその戦争の背景にあるのも古くからある民族問題で、そこで生じている強姦や虐殺という光景も、千年前、2千年前と何も変わらない。そういう意味では人類は進化していない。われわれはいまだに古い問題に直面し、これからも直面し続けるんだということを、改めて考えなければいけないと思うんです」
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