人流や物流の国際化に伴って侵入した外来生物は、農業や生態系などに様々な影響を及ぼしてきた。
中でも、人の健康被害に直結するのが、生活環境に姿を見せるようになった毒虫や毒グモだ。
広域で見つかっているヒアリやセアカゴケグモのほか、外来種のスズメバチも九州で分布を広げており、危機感が高まっている。
「びっくりするぐらい痛かった。1か月腫れが残った」。国立環境研究所生態
リスク評価・対策研究室の 五箇(ごか)公一室長は、米国でのヒアリ調査時に二の腕を刺された経験を振り返る。
ヒアリは高い攻撃性が特徴の南米原産のアリだ。ハチのようにお尻に毒針を持ち、
刺されると焼けるような痛みを伴う。1匹の毒は少量だが、血圧低下や意識障害を伴う
「アナフィラキシーショック」を引き起こすことがあり、海外では死亡例もあるという。
2017年、国内で初めて兵庫県で見つかり、これまでに北海道や関東、中国地方などの
18都道府県で確認された。五箇室長は「定着の一歩手前の状態。コロナ禍が世界的に
落ち着き、人や物の移動が激しくなる中で一層の警戒が必要だ」と警鐘を鳴らす。
いったん定着してしまうと、根絶は難しくなる。オーストラリアや東南アジアなどに分布する
セアカゴケグモは、国内では1995年に大阪府で初めて確認された。これまでに青森、秋田両県を除く45都道府県で見つかっている。
メスが神経系に作用する毒を持ち、激しい痛みのほか、 嘔吐おうと や 動悸どうき などの
症状を引き起こす。ただし、1匹にかまれた程度で死に至ることはないという。
道路の側溝や庭のプランター、自動販売機の下などに潜んでいることが多い。
攻撃性は高くないとされ、不用意に触らなければ被害に遭うリスクは低い。
兵庫医科大の 夏秋優(なつあき・まさる )教授(皮膚科学)は「人の生活環境に
当たり前にいる生き物になった。過剰に恐れる必要はないが、日常生活に潜むリスクとして知っておくことが大切だ」と話す。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9bd6c03b70ffb8392dc6d433a148a0f5fb427e39