「超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)」とは、ほとんどの銀河の
中心に存在すると言われている、非常に大きな質量を持つブラックホールです。
その質量は、小さなものでも太陽の数十万倍、
大きなものでは100億倍を超えるとも推定されています。
しかし、超大質量ブラックホールの性質はほとんど明らかになっていません。
その理由の1つは、直接・間接を問わず、超大質量ブラックホールの観測データがほとんどないためです。
天体において最も基本的な情報である質量の値でさえ、大半のブラックホールは推定に頼っています。
例えば、天の川銀河の中心部にある超大質量ブラックホール「いて座A*」は太陽の約430万倍の質量を持つと算出されています。
これは、私たちから見て近い位置にあるブラックホールであり、周辺を公転する恒星から算出可能であるという理由があり、非常に例外的です。
大部分の超大質量ブラックホールの質量の推定には、ブラックホールを持つ銀河の総質量から推定する方法と、
銀河中心部からの放射エネルギーやスペクトル線の性質から推定する方法が主に利用されていますが、
どちらも超大質量ブラックホールそのものを観測しているわけではなく、推定するためのモデルも不完全なため、非常に曖昧な数値しか算出されません。
こういった背景状況の中で、「エイベル 1201 BCG(Abell 1201 BCG)」と呼ばれる銀河は、
超大質量ブラックホールの質量を直接測定することが可能な数少ない銀河です。約27億光年先にある
エイベル 1201 BCGでは、近年の観測により、円弧状の構造が発見されています。これは、エイベル 1201 BCGが
「重力レンズ効果」によって光を曲げ、地球から観てエイベル 1201 BCGの後ろ側にある銀河の像を歪めた結果であると考えられています。
初期分析値となる2017年の推定では、エイベル 1201 BCGにある超大質量ブラックホールは太陽の
約130億倍の質量を有すると推定されました。ただし、当時はまだ円弧状の構造についてあまり解像度の
高い画像が得られていなかったことや、銀河に含まれる恒星や暗黒物質といった他の重力源の量や分布の推定に
不十分な点があったことから、確かさがあまり高くない数値であるという問題がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa59fa801449064459948122e0c532a4e78decc1