日本ではなぜ経口中絶薬に配偶者の同意が必要なのか
(一部抜粋)
「優生保護法」は1996年、「母体保護法」と名称を変え、内容が更新された。
だが、旧法の多くの側面が残された。そのため今でも、中絶を望む女性は夫やパートナー、場合によってはボーイフレンドから、書面で許可を得なくてはならない。
Pro-Choice demonstration in Los Angeles
アメリカでは「ロー対ウェイド裁判」の判例が覆されたことで抗議デモが広がった(ロサンゼルス)
そうした状況に直面した1人が、太田みなみさん(仮名)だ。
セックスの際にボーイフレンドがコンドームの着用を拒否したために妊娠した。日本では今もコンドームが避妊法の主流となっている。
太田さんによると、中絶に必要な書類へのサインを、ボーイフレンドは拒否したという。
「そもそも性行為をする前に避妊をお願いするのが変な話だし、お願いして(避妊)してもらえなかったのに、妊娠中絶への同意を相手にも求めなくてはならないのはおかしい」と、太田さんは言う。
「妊娠という私の体に起こった出来事が、私のものではなくて誰かのものになってしまっている。私の体なのに、なぜか誰かの同意がないと手術ができない。自分で自分の体のことが決められない。自分で自分の将来が決められない」
「自分が弱い存在のように感じたのを覚えています」
中絶に対する日本の考え方は、アメリカと違い、宗教的な信念が影響しているわけではない。家父長制の長い歴史と、女性の役割と母性に対する深く伝統的な考え方に由来している。
太田さんは「もっと根が深いと思う」と言う。
「子どもができたタイミングで女性は、女性であることではなく、母親であるということを求められるような気がして」
「つまり母親になるということには、子どものために全てを犠牲にしなさい、それはすばらしいいことでしょう? という価値観が内在されているように感じる。だから、私の体ではなくて、子どものために生きる体なんでしょう? と言われてる気がします」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-62747655
2022年9月1日
ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBCニュース(東京)