日本はこの20年、政府債務残高の抑制に努めてきた。日本の政府債務残高はコロナショック後のピーク時である2021年でも20年前の1.8倍。英米の5~6倍に比べ、はるかに増加ペースは緩やかで低い水準だ。
これはプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を最優先課題として掲げた結果、本来行われるべきだった財政出動や減税がなされなかったと解すべきだ。その帰結が低いインフレ率と、それに伴う実質実効為替レートの低下といえる。
政府が財政を拡張すべき分野は多いはずだ。例えば国土強靱(きょうじん)化、経済安全保障、環境対策などは、長期間にわたる安定的な支出計画が必要な分野といえる。米国をはじめとした主要国は、こうした分野を成長分野と位置づけ、積極的に投資を行っている。日本もこうした方策をとるべきだろう。
日銀は長期金利上昇容認を
江守哲 エモリファンドマネジメント代表
1990年慶応商卒、同年住友商事入社。非鉄金属トレーダーとして活躍後、ヘッジファンド運用などを経て独立。
現状は非資源国の日本にとって非常に厳しい。資源高が貿易収支の赤字を拡大させ、円安をさらに進行させるという状況が生じかねない。影響は最終的に消費者である一般国民に転嫁される。円安で企業の利益が膨らんでも、この悪影響の方がより大きいと考えるべきだ。
重要なのは、資源高はウクライナ危機に伴う一時的なものではなく、構造的なものという点だ。そもそも資源高とドル高が両立した局面は、過去30年ではほぼなかった。資源高の局面で資源国通貨が安くなれば、過度に資源国がもうかってしまう。このため、市場原理として資源高では資源国通貨高・ドル安になるのが一般的であった。
ところが今回はドル高でありながら資源価格が高騰している。脱炭素に向けた動きが進み、米国のシェール開発は停滞、供給減のため原油価格はもともと上昇基調にあった。ウクライナ危機だからといって、エネルギー企業はすぐさま増産には動けないし、米国も脱炭素の旗印を簡単には下ろせない。資源高は長期化するとみるべきだろう。