外国人の技能実習生を受け入れる企業が、法令に違反して計画と異なる業務に従事させるケースが相次いでいる。日本で技術や知識を身に付け、母国で生かしてもらうという本来の趣旨を外れ、単純作業に就かせる例も報告されている。「技術移転による国際貢献」を掲げる制度の実態を探った。
愛知県の廃棄物処理会社では、溶接作業で契約したインドネシア人6人にごみの分別をさせていた。
「あなたたちは私の雇用契約が『溶接』であることを分かっているんですか」
ごみの分別を毎日させられていたインドネシア人実習生の男性(29)は今年2月、たまりかねて日本人の社員にそう訴えた。母国では大学で情報技術を学び、日系の自動車工場で品質管理を担当していたが、月給は6万円ほどだった。「日本に行けば稼げるし、キャリアアップにもなる」と実習生に応募した。
◆職種の違い訴えたら手取り9万円に激減
男性ら6人は昨年12月に来日し、全員が溶接の職種で雇用契約を結んだ。だが、勤務先は廃棄物処理会社。プラスチックや不燃のごみ分別が仕事で、溶接作業に携わることはなかった。手取りで月16万円稼ぐこともあったが、職種について訴えた後は残業が減り、9万円ほどになった。
「国に帰った時、ごみの分別をやっていたとは言えない」と、検査権限がある外国人技能実習機構(東京)に実態を申告。今年6、7月に検査が入り、雇用契約と異なる仕事だと認められた。6人は退社し、現在は溶接作業ができる県外の企業で働く。男性は「母国の後輩に実習制度は勧められない」とつぶやいた。
◆採用難の会社側「給料高くなりウィンウィン」違法性あっさり
廃棄物処理会社の男性社長は取材に「現場が忙しくて(分別を)手伝ってもらっていた。作業の内容が違っていたけど、残業が多いし給料も高くなるのでウィンウィンだと思っていた」と説明。「僕らの業種は採用難。コンプライアンス(法令順守)のことには『すみません』としか言えない」と、違法性をあっさり認めた。
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