「自宅放置死遺族会」に込めた思い
さいたま市の父親(73)を8月13日に亡くした西里優子さん(27)も釈然としない思いを抱える。父は8日に陽性が確認されたが、保健所から入院ではなく自宅療養を求められた。たびたび保健所などに入院させるよう訴えたが、療養を継続するよう指示を受けた。13日に容体が急変して死亡するまでの間、PCR検査を受けたクリニックから10日に解熱剤を処方された以外、医療機関で医師の診察や治療を受ける機会が得られなかった。
9月に遺族同士で話す機会を得た西里さんと高田さんは、医療提供体制の不備や行政の対応を巡って、同じような怒りや悔しさを覚えていたことに気づいた。「他にも同じような気持ちを持った遺族がいるかもしれない」。そう思ったが、死者や遺族の個人情報は開示されていない。遺族会を立ち上げて、参加を呼びかけることを決めた。
会の名称は「自宅放置死遺族会」。「放置」の言葉を使ったのは、本来必要な健康観察や医療を受けられず死亡したと受け止めているためだ。また、行政側から「入院調整中」「自宅療養を判断する前の段階」との説明を受けるなど実際に死亡したのは自宅療養中に限らないことも考慮した。