襲撃のクマ、同一個体か 厚岸・標茶の牛被害 3年間で52頭死傷
厚岸、標茶】釧路管内厚岸、標茶両町で今夏、放牧中の乳牛などがヒグマに襲われる被害が9件発生している。被害は2019年に出始め、3年間で計52頭が死傷した。現場に残された体毛のDNA鑑定などから同一個体の仕業とみられる。両町は箱わなを設けるなど駆除を試みているが、成果は出ていない。道は19日、両町の要望を受け、広域的な対策の検討に乗り出す。
被害は当初、標茶町に限られ、隣接する厚岸町では7月16日に初めて放牧中の牛3頭が死んだ。夜間に襲われ、死骸の腹にかみ傷、背中には爪痕があった。その後も今月15日にかけて町内の牧場3カ所で計6頭が死傷した。
いずれの現場もクマは鉄条網の柵をくぐるなどして侵入したとみられ、被害が出た町営牧場では牛を放牧地から牛舎や他の放牧地に避難させるなど対応に追われた。
標茶町では19年に10件26頭、20年に4件4頭、今年も5件13頭が被害に遭った。道立総合研究機構(札幌)が両町で採取したクマの体毛をDNA鑑定した結果、推定300キロの同一の雄グマの仕業の可能性が高いことが判明した。
標茶町は被害が出始めてから、箱わなを設置してハンターを巡回させ、クマの隠れる場所をなくすために周囲の樹木を伐採するなどの対策を進めてきた。だが、クマは昼間は姿を隠し、今のところは決め手がない。今年の被害額は2千万円近くに達し、町幹部は「町単独での対策は限界だ」と困惑する。
厚岸町も町内の放牧酪農家に電気柵設置を推奨するが、被害を受けた小野寺竜之介さん(32)は「放牧地3キロを囲むとなると、経費がかさむ」と設置を見送り、飼料費が増えることになるが、夜間の放牧をやむなく中止した。
こうした事態を受け、両町は道に広域対策を要請。19日には両町の農協関係者も含めて初会合を開く。道立総合研究機構の釣賀一二三研究主幹は「クマは夏に繁殖相手や餌を求めて行動範囲を広げる。広域で駆除対策を進める必要がある」と指摘している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/579221