東京オリンピック(五輪)が終わった。五輪を取り巻く世界の注目はこれで北京へと移る。北京五輪へのカウントダウンが本格的に始まるということだ。習政権は北京五輪の成功を最重要事項に位置づけているが、それに対する課題も鮮明になりつつある。その課題とは、米国を中心とする欧米と中国の対立と、ウイグルをめぐる状況だ。
(中略)
◆ウイグル過激派は再び姿を見せるのか
もう一つがウイグル過激派をめぐる動向だ。今年に入ってウイグル人権問題に世界の注目が集まっているが、中国政府は長年ウイグル過激派の動向に神経を尖らせてきた。来年北京で開催されるのは冬季五輪だが、2008年には夏季五輪が開催された。そのとき、ウイグル過激派であるトルキスタン・イスラム党(TIP) を名乗る組織は、北京五輪開催中のテロを示唆する内容の動画を公開した。TIPによる6分間の動画では、五輪のロゴが燃やされ、五輪会場が爆破される様子が映し出された。またTIPのメンバーは、列車やバスなどの公共交通機関を含め中国市民が集まるすべての場所を避けるようイスラム教徒らに警告した。同組織は、五輪直前に雲南省昆明市で起きた連続バス爆破事件においても動画で犯行声明を出している。
そして、米軍のアフガニスタンからの撤退によって、同国の治安悪化がいっそう進み、ウイグル過激派やアルカイダなどのテロ組織が勢力を盛り返すことを中国は警戒している。来年の五輪の際、ウイグル独立派が北京でテロを実行する可能性は現実的に考えても低いが、ウイグル人権問題が国際的な注目を集め、米軍がアフガニスタンから撤退する現在のタイミングは、ウイグル過激派がネット上で姿を見せる上では都合がよい状況と言える。パキスタンで中国権益を狙ったテロが続いているが、ウイグル過激派が海外にある中国権益を狙うことは決して難しくない。北京五輪でウイグル過激派は再び姿を見せるのか。
https://newsphere.jp/world-report/20210812-2/