「一か八か」無責任体制が生んだ五輪強行 上野千鶴子さんの指摘
イチオシ 円谷美晶
毎日新聞 2021/6/20 08:00(最終更新 6/21 11:18)
https://mainichi.jp/articles/20210618/k00/00m/050/390000c
東京オリンピックの開催まで23日で1カ月。新型コロナウイルスのワクチン接種はようやく進み始めたが、いまだ感染は収束せず、不安は消えない。それでも日本が開催に突き進むのはなぜなのか。社会学者の上野千鶴子さんは、政局化した五輪と長く続く日本の「無責任体制」を指摘する。
◆最初に言いたい。これほど開催国や開催都市の人々に歓迎されない五輪は初めてではないでしょうか。世論調査を見れば、今も開催と中止で伯仲しています。大会ボランティアや聖火ランナーからも辞退者が相次いでいます。
開催しても「集まるな」「熱狂するな」、選手が来ても隔離されて「交流するな」。テレビ観戦するならどこでやっても同じ。渡航してきたアスリートや大会関係者は観光もショッピングもできず、従わないと罰金だとか国外退去だとか。潜在的な犯罪者のような扱いです。
――五輪へ向かう日本の姿を旧日本軍の失敗を分析した「失敗の本質」(戸部良一ら著)を例に説明されています。
◆作戦を決めて、引くに引けずに進んでいく、旧日本軍の敗戦の構図とよく似ていると感じます。今のワクチンが変異株に効くかどうか証明されておらず、未知の要因が多い。それでも運と信念を頼みに突き進んでいく。既に巨額の国費を費やし、1年延期によって施設の維持費や組織の管理コストもかかっている。損害が大きくなればなるほど引けなくなる構造です。意思決定者が誰かも分からない。誰も責任を取らないこの無責任体制は、戦後70年以上がたっても続いているのかと感じます。
まるで「ばくち勝負」
――菅義偉首相は「コロナに打ち勝った証しの五輪」と強調してきました。五輪開催の先には何が見えますか。
◆五輪は…
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