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取材対象の人生左右、自問も
保釈され、頭を下げる元法相の河井克行被告(手前)=2021年3月3日夜、東京都葛飾区の東京拘置所【時事通信社】
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《文春砲で失脚した政治家、官僚は数知れない。最近では菅義偉首相の長男による総務省幹部の高額接待問題で次期事務次官候補と目された谷脇康彦・前総務審議官や、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言中の賭けマージャンで黒川弘務・前東京高検検事長が辞職した。河井夫妻も「政治とカネ」の問題で議員辞職した》
―他人の人生を変えてしまうことにためらいは。
ありますよ、それは。人間ですから。常に自問自答はある。ただし、記事を書くことをやめる、ということはしません。忖度(そんたく)し始めるときりがない。無色透明、ど真ん中で、あらゆる組織、権力から等距離を保って、出すべき事実があれば出す。
―恨みも買うのでは。
よく「人生めちゃくちゃにされた」と言われますが、めちゃくちゃにしようと思って出した記事はないし、首を取ろうと思って出した記事もありません。ただ、結果的にそうなったことに関しては、われわれの記事がきっかけであるということは自覚しなければいけないと思っています。
―文春側にスキャンダルの心配はありませんか。
みんなすごく気をつけています。ただ、私たちはもともとそんな息苦しい世の中にするために記事を書いているわけではないんですね。例えば不倫したからといって、その人の人格なり人生まで否定しようなどとは考えていません。
誤解されやすいですが、文春が「正義の味方」と思われることは少し荷が重い。悪を断罪するよりも、面白いことをやろう。「人間、面白いじゃん」というのを伝えることのほうが「文春的」だと思います。
◇親しき仲にもスキャンダル
《政界にも多数の人脈を持つが、モットーは「親しき仲にもスキャンダル」。環太平洋連携協定(TPP)の調印直前に甘利氏の金銭授受問題を報じた際には、官邸から電話で「時期がまずい。どうにかならないか」と懇願され、きっぱり断ったという》
―政界から圧力もありますか。
電話を架けてきますね。甘利氏の金銭授受問題の時、知らない仲ではない官邸幹部から懇願されましたが、「なんともなりません」と。仲が良くても書くべきことは書く。でも、そこで関係を切らず、敵味方にならないで、なるべく人間関係は持続したいと思っています。そのために譲ることはないけれども…。
―菅政権をどう見ますか。
実は今の状況は菅さんにとってよかったとも言えると思います。目下、日本にとっての1丁目1番地は新型コロナ対策、ワクチン接種の加速化。各省庁に横串を通してロジを回す仕事が政界で一番得意なのが菅さんですから。
―「国家観がない」と批判されますよね。
議員秘書からのたたき上げだから、しょうがない面はあります。ただ、総理になったからにはそれを自覚して優れたブレーンを周りに置く必要があるんですけど、なかなかそうはなっていないようです。
―「ポスト菅」に望むことは。
これは菅さんが(自民党総裁に)再選された場合にも言えることですが、コロナ禍で露呈した危機に対応できない日本の脆弱性を変えていかなければいけない。新たに「この国のかたち」を描ける人、大きなスケール