7月23日から17日間にわたって開催される予定の「東京2020オリンピック競技大会」だが、国際オリンピック委員会(IOC)が2015年に策定したガイドラインによりオリンピック初のトランスジェンダー選手が出場する見通しになっている。しかし多くの異議の声があがっており、ベルギーの女子重量挙げ選手が「悪い冗談のようだ」とIOCを非難した。『New York Post』『insidethegames.biz』などが伝えている。
今年東京で開催されるオリンピックにトランスジェンダー選手が初出場することについて、ベルギーの女子重量挙げ選手アンナ・ヴァン・ベリンゲンさん(Anna Van bellinghen、27)がメディアを通してIOCに異議を唱えた。
焦点になっているのは、トランスジェンダーであることを公表しているニュージーランドの重量挙げ選手ローレル・ハバードさん(Laurel Hubbard、43)についてだった。ローレル選手は男性として生まれ、2013年に35歳で女性に性転換している。それまでは男子競技に出場していた。
その後、2015年にIOCが策定したガイドラインにより、トランスジェンダーの女性選手は男性ホルモンのテストステロン値が競技の前の12か月間、規定値(10nmol/L)以下であれば女子競技に参加することができるようになった。
これによりローレル選手はガイドラインに基づいた上で、女子重量挙げの大会に何度も出場して優秀な成績をおさめてきた。また今のところオリンピック出場についても同様のルールとなっており、ローレル選手は東京オリンピックの出場資格を持っているのだ。
この策定に多くのアスリートやスポーツ関係者から異論があったものの、これまで表立って声をあげる者はいなかったようだ。しかしこのほどアンナ選手がスポーツ情報サイト『insidethegames.biz』に、トランスジェンダー選手に関するIOCの判断について「女性アスリートにとって悪い冗談のようなものだ」と苦言を呈した。
アンナ選手は「トランスジェンダーのコミュニティについては全面的に支持しており、彼らのアイディンティティを否定するものではない」と前置きしたうえで、次のように語っている。
「トランスジェンダーの皆さんのために競技出場に関するルールを定めることは、様々な状況を考慮しなければなりません。実際には非常に難しいことであり、トランスジェンダーとそうでない者の双方が満足のいくような解決策を見出すことは恐らく不可能だと思っています。」
「しかしながら重量挙げを高いレベルでトレーニングしている方なら、誰もがこの“特殊な状況”がアスリートにとって全くもって公平ではないという事実を骨身に染みるほど分かっているはずです。」
「それなのに、(ローレル選手が)思春期から女性に性転換する35歳までの約20年間、完全な男性ホルモンシステムが機能していた身体で(生物学的な)女性と戦うことが、今さら有利かどうかなんて議論しなくても分かることじゃないですか?」
「スポーツ業界の権威者にとっては、確かにこのような稀な状況を調査していくことは簡単なことではなく、多くの実行不可能な状況があると理解しています。でもこれらは従来のアスリートにとって、完全に悪い冗談のように感じられます。」
さらにアンナ選手は、トランスジェンダーの女性選手の競技出場が増えるにつれて、従来の生物学的に女性である選手のメダル獲得やオリンピックへのチャンスの道が閉ざされてしまうことを懸念し、IOCなどの機関により厳格なルールを設ける必要があると強く訴えている。
https://japan.techinsight.jp/2021/06/masumi060515