菅義偉首相が掲げた「1日100万回接種」の切り札として、防衛省に任せたワクチン大規模接種センター。しかし、その予約システムは、番号の入力がデタラメでも予約できてしまう全くの欠陥システムだった。同省側は「虚偽予約防止の実現は困難だった」などと釈明をするが、コロナ禍での政府の無能ぶりを象徴するようなこうした問題、背景に何があるのか。
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ワクチン接種にまつわるあまりにお粗末なITシステム群。だが、今は「ワクチン接種を急げ」という大号令のもと、問題点の指摘さえ控えろ、と唱える向きもある。防衛省の欠陥予約システムに関しては、検証取材の一環として架空予約(その後予約取り消し)を行った朝日新聞出版と毎日新聞に対し、岸防衛相が「悪質な行為。厳重に抗議する」と言えば、岸氏実兄の安倍晋三前首相が「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯」と攻撃した。
上智大の中野晃一教授(政治学)は「痛いところを突かれたための『逆ギレ』以外、何ものでもない。攻撃することで、失敗を覆い隠そうとするあさましさ。現役防衛大臣と前首相がジャーナリズムの萎縮を狙っているようにしか見えず、国際的にみても恥ずかしい」と指摘。政治ジャーナリストの角谷浩一氏は「そもそもワクチン接種の段取りの悪さを隠すために、安全保障上の最終手段としての自衛隊を使うこと自体あっていいのか、はなはだ疑問だ」とした上で、「国民が一丸となる時に政府に不利なことを言う人は非国民だ、という感覚。先の大戦時と同じ価値観で今も動いているかと思うと、驚きしかない」と語った。
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