「暴走」誰も止められず…メディアの責任も
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戦争遂行の最高責任者だった東条だが、人に弱みを見せることも多く、軍内部すら完全に掌握できていなかったという。辻田さんも「形式上は天皇が最高指揮官だったが、実際にはトップ不在のまま手足が勝手に動いていたのが大本営の実態。誰もコントロールしないからウソがまかり通り、それを誰も止めなかった」と見ている。
評論家の山本七平(1921~91)は『「空気」の研究』(文春文庫)の中で、戦争末期の戦艦大和の出撃について「全般の空気よりして、特攻出撃は当然と思う」という軍令部幹部の証言を紹介している。出撃が無謀なことを示す論理やデータはそろっていたが、「全般の空気」がそれに勝ってしまったのだ。
でたらめな大本営発表には、記者発表で仕上げの尾ひれがつけられた。発表後に軍の担当者が「この発表の意図はこうだ」「ここはこう書いてくれ」とオフレコでレクチャーし、記者たちは軍の意向に寄り添った記事を書いた。軍の意向に逆らわず、むしろ積極的に空気を読んで戦争の片棒を担いだメディアの責任も大きい。