、一定のリスクを伴うけれど、自由を尊重するのか。その選択によって落とし所は変わってきます。唯一無二の「こうあるべき方法」はありません。
それぞれが社会の価値観をどう表現するか。何を捨てて、何を取るのか、究極的に選択が求められていると思います。
ーーそういう意味で罰則を作るというのは、監視社会を強める選択ですね。
もし、公衆衛生的に罰則を用いる方法を警察権力を用いて効果的にやるならば、一番有効な方法は中国の真似をすることです。街中に兵隊を立てて、行き来を遮断して、街を囲って、全員PCR検査をする。
強制権を使うなら中国のやり方が一番です。
だけど、そのやり方は民主的ではないから私たちは「感染症法」を作ったのに、昔の時代に戻ろうとしている。
中国のやり方が悪いとは言いません。確かに感染制御をあれほど素早く達成できたのは、効果がある方法だったということです。
ただ、日本の社会のあり方としてあれを望むのか。少なくとも民主国家の日本がやるべきではないし、民主国家として成長する過程で作り直した感染症法を元に戻す理由にはならない。
人を押さえ込んで、ウイルスは押さえ込めない。ウイルスを押え込むには手をつなぐ力のほうが日本には合っています。それを信じて、第一歩としてこの声明を出したのです。
【橋本英樹(はしもと・ひでき)】東京大学大学院行動社会医学講座教授
1988年3月、東京大学医学部卒。同大学内科勤務、帝京大学医学部講師、東京大学医学部附属病院特任教授など経て、2012年から現職。
専門は公衆衛生学、健康科学、社会格差による健康影響。編著書に『医療経済学講義』(東大出版)と『社会と健康』(同)。
(おわり)