過去の経験でも、強制的な措置は逆効果だった
性感染症対策や後天性免疫不全症候群(AIDS)対策において強制的な措置を実施した多くの国が既に経験したことであり、公衆衛生の実践上もデメリットが大きいことが確認済みです。(日本医学会連合声明より)
ここに書かれているのは、1990年代のキューバのHIVの感染対策の例です。キューバでは治療法がまだ見つかっていない時代、急速にHIV感染が広がったので、感染者を隔離したのです。
結局それでみんな逃げてしまって、HIV感染をコントロールできなくなって、やめることになりました。
人間は強制や自由を奪われるとわかったら、それに反発するという流れは歴史的にもわかっていることです。それを日本は今の時代にあえて繰り返そうとしている。
特に今、キャパシティがオーバーしてへばっている保健所にダメ押しの一撃を加えることになります。それだけは避けてもらわないと、日本の保健所システムは崩壊します。
医療崩壊どころか保健所崩壊したら本当にどうしようもないところまで行き着きます。
ーーそれぞれの声明に、入院や宿泊療養に協力するなら、本人の就労や所得保障、介護や育児サービスなど生活を十分補償するように書かれています。
入院を拒否するのは、「俺は何者にも縛られないのだ」という動機よりは、「それによって仕事を失う」とか「その間、誰がうちのおじいちゃんの面倒を見てくれるの?」という実際的な問題を避けるためであることが多い。
現実的に困ってしまうので、「今は入院できない」と拒否する人が多いわけです。その人たちに対して、「いや決まりですから」と罰を与えるのは、ビクティムブレーミング、つまり被害者を非難するようなものです。
ーー非常に根本的な要請も声明には書かれています。「患者・感染者とその関係者に対する偏見・差別行為を防止するために、適切かつ有効な法的規制を行うこと」というのは、具体的にはどんな規制が考えられますか?
「差別心を持ってはいけません」と言っても、みなさん持つものでしょう。
やはり教育の場と職場で差別をしない規制を設けることです。
まず、教育の場で差別的な言動を学校や教員がとってはならない、などのルールを決める。少なくとも学校教育の場で差別的な行為が起こらないような規定を入れることはできますね。
職場でも職場での差別禁止があります。障害者差別解消法がありますが、それを拡張しても規制できるかもしれません。