長年日銀の政策を見てきた東短リサーチの加藤出氏は「体温が上がらないからといって、体温計じたいを熱するような政策だ。当然体調は良くならない」と指摘。「長い目でみると、日銀が日本経済の成長力をそいでいる」と批判する。
株価は本来、企業業績や景気の予測に基づいた投資家の売買動向で上下する。経済の体温計とも言われる理由だが、日銀のETF購入は成長性の乏しい企業の株価も上げてしまう。見た目の好景気は演出できるが、企業の経営改善につながらず、競争も働きにくい。
◆企業間にも不公平感
格差助長も日銀のETF購入の問題点だ。証券保管振替機構によると、日銀がETF購入を拡大した2013年以来、国内の株の保有者は1300万人強で横ばい。株高の恩恵は、株を保有する富裕層を中心に、一部にとどまる。
企業の間にも不公平さを生む。株高は資金調達のしやすさや信用力などで上場企業に有利だが、中小企業をはじめとする未上場の企業にはあまり関係ない。
「買い支えは危機の時期に限れば意味はあったが、一向に達成できない物価目標にこだわり規模を拡大するあまり、格差を広げた面がある」。東京財団政策研究所の小林慶一郎氏はこう説明する。