――新型コロナウイルス対策では後手が目立ちましたが。
「そのコロナ対策でも、緊急事態宣言を可能とする特別措置法、国民への10万円給付に活用されたマイナンバー制度を整備したのは民主党です。官僚支配打破を国民にアピールしていた民主党ですが、人事で意に沿わぬ官僚を飛ばすようなことはほとんどなく、官僚からの問題点の指摘にも比較的耳を傾けていました」
――平嶋さんは総務省の自治税務局長だった6年前、ふるさと納税を巡り菅官房長官に異を唱え、左遷されたと言われています。
「ふるさと納税は総務相を務めた菅さんの肝いりで、08年に創設されました。その後の14年、官房長官となった菅さんから、自治体に寄付する上限額の倍増などを指示されました。ただ、自治体から寄付者への返礼品が高額化し、競争が過熱する懸念があった。私は総務省通知と法律で一定の歯止めをかける提案をしましたが、菅さんは『通知のみでいい』とおっしゃいました」
――その8カ月後に、自治大学校長に異例の転出となりました。
「こうした『異例人事』は私だけではありません。だから、いまの霞が関はすっかり萎縮しています。官邸が進めようとする政策の問題点を指摘すれば、『官邸からにらまれる』『人事で飛ばされる』と多くの役人は恐怖を感じている。どの省庁も、政策の問題点や課題を官邸に上げようとしなくなっています」
――官邸人事で「政と官」の関係が変わった、と。
「役人が恐れるのは、人事の影響を受けるのは自分だけではないと思うからです。直属の上司、その上の上司、部下、ひいてはトップの事務次官、大臣らの人事にも響く、と感じています。私もふるさと納税の時、総務省のある先輩から『君だけの問題じゃ済まなくなるからな』と言われました」
――菅さんは「たたき上げの苦労人」と言われる一方、「剛腕」のイメージもあります。
「菅さんは人事でムチだけでな…
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