目の前に危険が迫っている。自分はもうだめだけど仲間は助けたい。
そう感じるのは、人間、動物、植物のみならず細菌も同様のようだ。
細菌の中には、死際に断末魔の叫びをあげ、群れの仲間に
危険を知らせる種がいるのだそうだ。それは進化をうながし
薬剤耐性を獲得させることすらあるという。
叫びといっても、私たちの耳に聞こえるわけではない。
それは化学物質を使った警報で、「ネクロシグナル」とも呼ばれる。
(中略)
そして明らかになったのは、大腸菌が死ぬときに「AcrA」と
いうタンパク質成分を放出し、これが生きている大腸菌の
外膜にくっつくと、脱出が始まるということだ。
だが、この化学的断末魔の叫びは、ただ危険を知らせるだけの警報ではない。
生きている細菌の膜に備わっているポンプ機能の
スイッチを入れ、侵入してきた抗生剤を排出させるのだ。
またネクロシグナルは将来へ向けての行動でもある。
これによっていくつもの遺伝子にスイッチが入り
彼らにとって有害な物質への耐性まで獲得させるからだ。
(中略)
この発見からうかがえるのは、たくさん細菌が集まっているところへ
中途半端な抗生剤を投与してしまえば
かえって薬剤耐性を獲得させてしまう恐れがあるということだ。
こうしたネクロシグナルは、大腸菌以外の
グラム陰性菌やグラム陽性菌にも備わっているとのこと。
薬剤耐性を持つ細菌の出現は、医療への大きな脅威となっているが
その背景には、このような細菌の巧妙な仕掛けが存在していたようだ。
https://news.biglobe.ne.jp/trend/0829/kpa_200829_4584570152.html