小池百合子・東京都知事の半生を描いたノンフィクション『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が話題になり、なかなか書店で手に入らない。伝手をたどってなんとか入手した本書を読み、さまざまな「物語」に彩られた人物像に驚愕した。
読者の最大の関心は「カイロ大学を首席で卒業した」とされる経歴の真偽だろう。そのことにふれる前に、著者の石井妙子氏とこの問題のかかわりについて言及したい。
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小池氏は「卒業証書もあり、カイロ大学も認めています」と答え、都議会で「法的な対応を準備している」と述べたが、今日に至るまで、石井氏は訴えられていない。
■アラビア語の難解な文語で講義
形の上では、カイロ大学はエジプトの国立総合大学だが、中東など幅広いアラブ・イスラム諸国から多数の留学生がやってくる。いわばこの文明圏の「エリート養成所」だという。
サダム・フセイン元イラク大統領(1961年、法学部中退)、アラファトPLO議長(55年、工学部卒)、ガリ国連事務総長(46年、法学部卒)、石油ショックの時に世界を揺るがしたサウジアラビアのヤマニ元石油相(51年、法学部卒)、アルカイダ指導者のアイマン・ザワヒリらを輩出している。
石井氏によると、カイロ大学で学生を苦しめるのは大学で使われる言語だそうだ。エジプトでは口語(アーンミヤ)と文語(フスハー)が明確に分かれており、大学の教科書は文語で書かれ、講義も文語でなされる。大変難解で、アラビア語を母国語とする人でも苦しむという。
「アラビア語の口語すら話せなかった小池が、文語をマスターして同大学を四年間で卒業する。そんなことは『奇跡』だと嫌味を込めて語る人は少なくない」
https://books.j-cast.com/2020/06/13011986.html