●情報法制研究所(JILIS)理事の高木浩光氏の話(一審で弁護側の証人として出廷)
高裁判決は地裁判決とは異なり、反意図性について「規範的に判断しなければならない」という点を認めました。規範的に判断した上で、意図に反することもありえると考えていましたが、今回はその通りの判決でした。
判決ではその理由が色々述べられていましたが、ちょっとでも賛否両論があったら、否定にはたらくというのは驚きました。最高裁で否定されるべきポイントはここだと思います。
ちょっとでも批判があれば犯罪ということを意味するのでしょうか。例えば、トラッキングクッキーでターゲティング広告のためにウェブ閲覧履歴を盗んでいる人は、全員有罪になってしまいます。
私の意見としては、賛否両論があるプログラムについて犯罪とする趣旨の立法ではなく、あくまでウイルスを対象としていたと思います。ほとんどの人にとって汚らわしいようなもの、社会的に迷惑なものを対象とした立法です。
●壇俊光弁護士の話(Winny事件弁護人)
今回の高裁判決は、プログラムの使用者に利益を与えずに一定の不利益を与えるもので、不利益の表示もされていないという理由で不正性を認めました。
しかし、これらは反意図性で検討するべき要素であって、裁判所の判断は意図性と不正性の違いを十分理解せず、その結果不正性の要件を死文化するものと言わざるを得ません。
現在、不正指令電磁的記録の罪は、本来のコンピュータウイルスの規制を越えて「デジタルけしからん罪」として濫用されつつありますが、今回の事件はその象徴的な事案と言えます。上告は必須で、最高裁の判断が注目されます。