債務超過に陥っているジャパンディスプレイ(JDI)は、いちごトラストから1008億円を調達することで合意したと発表しました。いちごトラストに優先株と新株予約権を割り当てるほか、3~5年のロックアップ期間を設けるなど、既存株式に配慮して株式の希薄化を抑える措置も取ります。
このほか、官民ファンドINCJへの既存債務を長期性・資本性資金に切り替え、財務体質を改善。加えて、大口顧客(アップルと思われる)による装置買取(200億円)や、有力サプライヤーとの事業・財務面の支援(5000万ドル)に向けて協議を継続するなどして、債務超過からの脱却を図ります。
そんななかで注目を集めるのが「有機EL」です。アップルがiPhone Xで液晶から有機ELへ転換したのをはじめ、各社のスマートフォンで液晶から有機ELへのシフトが相次いでいます。
JDIはすでにApple Watch向け有機ELディスプレイを量産していますが、いずれiPhoneも液晶モデルを全廃すると予想される中、JDIにとってスマートフォン向けディスプレイの液晶から有機ELへの転換は急務と思われます。
しかし、JDIは会見で、スマートフォン向け有機ELの量産に消極的な姿勢を示しました。その理由は主に財務面です。JDIは今回の資金調達で経営再建を図るなかで、債務超過を招いた『過剰な設備投資』を適性な水準に戻すと強調。スマホ向け有機ELの量産はコストが掛かりすぎるため断念します。
『有機ELの量産をスマホ向けに転換するとなると、多大なコストが発生する。(中略)有機ELについては、自分のバランスシートを膨らませてまで、設備投資のコストをかけようとは思っていない。ただ、(Apple Watch向けの量産を開始するなど)せっかくここまで技術を磨いたので、きちんとした顧客のニーズがあり、大量生産の技術に確信を得て、量産を支援してくださる事業投資家・金融投資家が現れるのであれば、その際の交渉次第でありえる』(JDIの菊岡稔社長)
つまり、自力でのスマートフォン向け有機EL量産は行わないと宣言した格好。確かな顧客や支援する投資パートナーがいれば量産に踏み切るとのことなので、Appleなどが支援すれば量産に踏み切る可能性もありそうです。
なお、JDIは自社のTFT基板技術を応用した「貼るイメージセンサー」など、液晶以外のビジネス開拓を進めていますが、具体的な収益化は見えていないのが現状。ディスプレイの潮流が液晶から有機ELとシフトする中で、この判断が命取りとなる可能性もあります。
なお、JDIを救済したいちごアセットのスコット・キャロン社長は、大口顧客(Appleと思われる)のJDIに対する評価に言及。『非常に深い技術的な信頼、日本企業への信頼がある。有言実行、技術や納期の信頼もあり、問題が起こった時の盤石な体制などを、評価していただいている』と述べ、JDIはアップルからの信頼が厚いと明かしました。
救済されたJDI、スマホ有機EL量産には消極的 しばらく液晶一本足か - Engadget 日本版
https://japanese.engadget.com/jp-2020-01-31-jdi-el.html