九州大学大学院歯学研究院の武 洲准教授と倪 軍軍(ニイ ジュンジュン)助教の研究グループは、中国吉林大学(九州大学との協定校)口腔医学院の周延民(シュウ エンミン)教授、同大学の聂 然(二ー ラン)大学院生(交換留学生)らの研究グループとの共同研究において、ヒトの歯周病の歯茎および歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg 菌)(※1)を全身に慢性投与したマウスの肝臓に、脳内老人斑成分であるアミロイド β(Aβ)(※2)が産生されていることを初めて発見しました。
臨床研究により重度歯周病の罹患と認知機能低下が正相関することが報告され、Pg 菌成分がアルツハイマー型認知症患者の脳内に検出されたことから、歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与が注目を集めています。研究グループは、ヒトの慢性歯周病の歯周組織におけるマクロファージおよび Pg 菌を全身投与した中年マウスの肝臓におけるマクロファージ(※3)に、Aβ1-42(※4)と Aβ3-42(※5)の産生を発見しました(参考図1)。さらに Pg 菌による炎症性マクロファージにおいて、カテプシン B(※6)に依存して Aβ1-42 と Aβ3-42 産生が誘導されていることを突き止めました。
これまでアルツハイマー型認知症の特異的な脳内病態である Aβ 老人斑は、脳内で産生・蓄積すると考えられてきました。今回の研究では、Pg 菌により惹起された炎症組織におけるマクロファージが脳内 Aβ 老人斑のリソースとなりうることを示しました。カテプシン B は Pg 菌感染したマウス肝臓におけるマクロファージにおいて炎症誘発および Aβ 産生に関与することから、その制御により歯周病によるアルツハイマー型認知症の発症と進行を遅らせることが期待されます。
本研究成果は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP16K11478、JP16H05848、JP17K17093)および中華人民共和国国家自然科学基金の支援を受け、2019 年 11 月 12(火)に国際学術誌のオンラインジャーナル「Journal of Alzheimer’s Disease」に掲載されました。なお、用語解説は別紙をご参照ください。
研究者からひとこと:
ヒト歯周病の歯茎からアルツハイマー型認知症の脳内老人斑成分が産生されることに大変驚きました。アルツハイマー型認知症の予防に口腔ケアはとても重要です。
続きはソースで
【プレスリリース】世界初ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが判明 ~歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与解明の新展開~ | 日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/83594