台風19号の影響で、多摩川沿いに位置する東京都調布市と狛江市で起きた浸水被害で、多摩川に雨水などを流す二カ所の排水路の水門を開けたままにしたため、増水して水位の上がった多摩川から水が逆流し、被害が広がった可能性があることが、水門を管理する狛江市などへの取材で分かった。
台風19号の際の猛烈な雨で、多摩川沿いの各地域の排水路は容量を超え、浸水被害が起きた。各自治体が持つポンプの排水能力には限界があり、増水した多摩川を前にして水門を開けるか閉めるかは、各自治体に突きつけられた新たな課題だ。
水門を閉めなかった理由を狛江市は「当時は市内の降雨量が多く、水門を閉じると排水路があふれる恐れがあったため」(下水道課)と説明する。被災した市民らの間では市の責任を問う声が上がっており、住民説明会を求める署名活動も始まった。
水門は、狛江市元和泉の「六郷排水樋管(ひかん)」と同市駒井町の「猪方(いのがた)排水樋管」。
主に調布市南部を流れる排水路・根川が多摩川に注ぐ地点にある六郷管では、十二日午後四時から、市職員と消防団員らがポンプを使い、根川から多摩川への排水作業を開始。同六時には水門を一度閉め、排水作業を続けた。しかし、道路への冠水が広がったため、約二十分後に水門を開けた。
午後七時半、多摩川の基準水位が六メートルを超えたため、職員らは水門は開けたまま避難のため退去した。
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猪方管では水門は開けたまま、市職員らが監視。午後七時半に退去した。両地点の職員からは退去前に、多摩川から排水路への逆流はなかったとの報告があったという。
職員らの退去後、水位を増した多摩川から二つの排水路への逆流が始まったとみられる。六郷管の周囲では調布市染地地区を中心に床上、床下合わせて約百八十軒が浸水。猪方管の周辺では、狛江市の駒井町、猪方地区で約二百四十軒の家屋が浸水した。
一方、六郷管の約一キロ上流にある調布排水樋管を管理する調布市も当時は水門を開けたままにしていたが測量調査の結果、「多摩川からの逆流はなかった」としている。
◆流域自治体 対応分かれる 国「逆流なら原則閉門」
台風19号で増水した多摩川の流域自治体では、排水樋管と呼ばれる排水管の水門を閉めるか、開けるかで対応が分かれた。
川崎市では浸水エリアにあった五カ所の水門を開けていた。田園調布の住宅街で浸水被害のあった大田区では水門を閉めながらポンプで排水作業をしていたが、途中で打ち切っていた。
一方、国の京浜河川事務所は、管轄する多摩川流域の樋管の水門六カ所のうち四カ所を閉めた。
太田敏之副所長は「水位の高い多摩川からの逆流を防ぎ、被害を最小限に抑えるため、逆流を確認した場合などは水門を閉めるのが基本」と説明している。
東京新聞:多摩川浸水の調布・狛江 水門開放 水路逆流か:社会(TOKYO Web)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019102502000142.html